東京海上、過去最大級の買収ではじく皮算用 9400億円で手に入れる米保険会社の実力は?

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結果、海外事業から得られる利益は、今2015年度の予想ベースで1270億円とすでにグループ全体の38%に達している。今回の買収手続きが完了すれば、海外事業の利益は約1750億円へと一段拡大し、全体に占める比率も46%へと上昇するイメージを描いている。

HCCの株価は、1株あたり純資産に対してPBR(株価純資産倍率)1.4倍程度で市場取引がされてきており、これに経営支配権を獲得するプレミアムを1.35倍程度上乗せすることから、買収価格は純資産対比で1.9倍となる。

リストラなしでシナジー発揮へ

「買収価格が高いのでは?」といった記者からの質問に対して、永野社長は「本当にいい会社と一緒になろうと思えば、今のマーケット環境では、価格を出さないといい相手は見つからない。プレミアムはヒストリカルな事例に比べて突出して高いわけではない」と説明。発生額見込みで最大約5600億円程度とされる「のれん」についても、「減損リスクがもっとも少ない会社を買収する。そういうリスクに晒されることはまずないだろうと考え、進めている」と自信を示した。

英国ロイズにおけるキルンをはじめとする過去の大型買収において、東京海上は、買収する会社選択の目利きだけでなく、買収後の経営においても、グループ全体の企業価値向上につなげる形でこれまで実績を示してきた。今回も過去の買収と同様に、リストラといったコスト削減に頼ることなく、シナジー創出を図る方針だ。

東京海上はグローバル水準の利益成長力、資本効率の基準となる二ケタ台の修正ROEを目標として掲げている。今回の買収のインパクトとして、東京海上は買収前の今期予想ベースの修正ROEが買収によって7.8%から9.3%まで高まるイメージを示している。

グループのネットワークを通じて、HCCの主力商品である医療・障害保険や役員賠償責任保険などを販売するほか、財務力を生かしてHCCの保険引き受け能力の拡大やHCCの運用収益の拡大も図っていく。買収後の経営統合作業の中で、こうしたシナジー発現に向けた取り組みを推進する構えだ。

水落 隆博 東洋経済 記者

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みずおち たかひろ / Takahiro Mizuochi

地銀、ノンバンク、リース業界などを担当

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