「ウィルキンソン ジンジャエール 辛口」はコンビニで勝負をかけるはずだ。自販機の台数で劣後しているからだけではない。理由がもう1つある。それは、コンビニの店内には飲料とアルコールが併売されているからだ。
実は、商品パッケージには「ゼロ」の表示が目立たない代わりに、裏面にしっかりと「割り材としても。」と書かれている。何も「モスコミュール」「ジンバック」「ボストンクーラー」などの「オシャレにカクテルを作ろう!」といっているワケではない。コンビニで安く手に入る「ホワイトリカー(焼酎甲類)」を割るだけでいい。もしくは、アルコール度数が8%以上の「ストロング系チューハイ」を割って軽くしてもいい。そんな飲み方を密かに推奨しているのだ。
アサヒ飲料のグループ会社であるアサヒビールには自社のウィスキー「ブラックニッカ」を使った缶入りの「ブラックニッカクリアハイボール」がある。しかし、ハイボールブームの火付け役であるサントリーの後塵を拝した状態であるのは否めない。世の中はビールのしっかりした飲み応えよりも、スッキリ系のハイボールやカクテル、チューハイがブームであるのは間違いない。その流れにしっかり乗りたいという意図が「割り材としても。」というひと言には込められているのである。自販機で購入して、家に持って帰ってカクテルを作るという消費者行動は考えがたい。故に、コンビニが主戦場なのである。
飲料がコンビニの棚に並ぶには、2段階のハードルがある。チェーン本部が扱いを決めることと、フランチャイズのオーナーが本部に発注することだ。初回ロットはメーカーと握った本部の押しと、メーカーがマージン率を通常より1割ほど高く設定することもあり、店頭に多めに並ぶ。事実、6月24日付日経MJに掲載された商品ヒットチャートでは、初登場で6位に入っている。
第2回発注分から通常のマージン率になるので、そこからが本当の勝負だ。今後、どのように健闘していくかウォッチしてみよう。まずは、その辛口を楽しみながら。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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