「健康診断の数値」を気にする50代が失うもの 一昔前の医学の常識を信じているかもしれない

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では何のために医学は数値の異常に介入してくるのでしょうか。言うまでもなく、数値を正常に戻すためです。正常に戻せば、病気のリスクが減ると信じられているからです。

ところが、それを真っ向から否定するデータがあります。

アメリカの国立衛生研究所の下部組織がこんな研究を行なっています。糖尿病患者1万人を2つのグループに分けて1つは標準療法、もう1つのグループには強化療法を試みます。「強化療法群」はヘモグロビンAlcを正常値の6・0%以下に抑え、「標準療法群」は7%~7・9%に抑える緩めの療法です。

いまの日本の医学常識を当てはめれば、結果は明白です。「強化療法群」のほうが健康を維持できるはずです。ところが3年半後の死亡率は「強化療法群」のほうが「標準療法群」より高かったのです。

同じようなデータはほかにもありますが、今度はコレステロール値についてのデータを紹介してみます。

医学常識はいまも変わり続けている

フィンランド保健局が1974年から1989年にかけてコレステロール値などが高い40~45歳の男性管理職1222人を対象に調査したデータです。

4カ月ごとの健康診断に基づいて数値が高い人には薬を処方し、塩分制限などの健康管理を行う「介入群」612人と、健康管理に介入しない「放置群」610人に分けて追跡調査をしたところ、がんによる死亡率、心血管系の病気の罹患率や死亡率、挙げ句は自殺者数に至るまですべて「介入群」のほうが「放置群」より高かったのです。

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和田 秀樹 精神科医

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わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

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