「健康診断の数値」を気にする50代が失うもの 一昔前の医学の常識を信じているかもしれない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ここでちょっと補足しておきますが、コレステロールは細胞膜の主原料で人間が生きていくためには欠かせないものです。よく「悪玉」「善玉」と呼んで区分することがありますが、どちらも人間にとって重要な働きをしていることに変わりはありません。

けれども循環器の医者から見ればLDLコレステロール、つまり「悪玉」が増えすぎると血管壁に入りこんで動脈硬化の原因になるとされます。

コレステロールが高いほどうつになりにくい?

ところが免疫学者に言わせればコレステロールは免疫細胞の材料になるからコレステロール値が高い人のほうが免疫力が高いとなります。あるいはコレステロールは脳にセロトニンを運ぶ働きもあるとされますから、数値が高い人ほどうつになりにくいという報告もあります。

50歳からの脳老化を防ぐ 脱マンネリ思考(マガジンハウス新書) (マガジンハウス新書 020)
『50歳からの脳老化を防ぐ 脱マンネリ思考(マガジンハウス新書) (マガジンハウス新書 020)』(マガジンハウス)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

さらには老年医学の立場から見れば、コレステロール値の高い人のほうが男性ホルモンが多いため、齢を取っても活性が高いといった研究もあります。

「コレステロール値が多少高いほうが病気も少なく、長生きできる」と主張する医者だっているのです。つまり「こっちにとっては悪くても、あっちにとってはいいこと」というのはしばしば起こり得るのです。

しかしいくらこういうデータを並べても、循環器の医者が自分の狭い立場にこだわる限り、「そっちには良くてもこっちには悪いこと」となります。健診で数値に異常が見つかればそれを正常に戻すことだけ考えますから、相変わらず薬と食事制限を申し渡すでしょう。

ちなみに2015年には、コレステロールを「悪玉」視していた厚生労働省も摂取制限を撤廃しました。卵や肉などいくら食べても大丈夫ということになりました。10年も発てば医学常識が変わることなど、いくらでもあるのです。

和田 秀樹 精神科医

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事