宇都宮ライトレール、その人気で露呈した"欠陥" 何の対応もせず放置すると評価は下がり続ける

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しかし、現金利用者が多い平日の昼間と土休日は遅延が見られる。運賃収受そのものに時間がかかるほか、全扉で降車するIC乗車券利用者と最前部扉でしか降車できない現金利用者の車内動線の交錯が問題となっている。現金利用者は台湾のLRTのように全扉で乗降できるようにする必要がある。

まれにしか乗らない高齢者や小学生、他所からの来訪者など、現金で乗車する人は必ず一定数いる。これらの人に旧来の運賃収受方式を適用し、運賃支払いのために車内移動を強い、横断歩道から最も遠い最前部扉での降車を強いるのは、「人に優しい」LRTには似合わない。

最寄りの扉で乗降できるという1日乗車券を発売した。IC乗車券に違いないと期待したが、何と葉書半分ほどの大きさの紙券でひもが付いている。「周りから見えるように首からかけて乗降いただきます」と言う。遊園地の乗り物切符ならばともかく、公共交通の切符を首からぶら下げろとはいかがなものか。

富山ライトレールでも利便性の問題が残った

2006年に開業し「わが国初の本格的なLRT」と言われた富山ライトレールも、旧来の運賃収受方式のためにダイヤが乱れ、鉄道線の国道踏切の遮断時間が長引いて国道が渋滞し、社会問題となった。対策として、IC乗車券に限って「セルフ乗車」を導入(宇都宮の方式と同じ)した。現金利用の場合は旧来の方式のままだったが車両が小型なためその弊害は小さく、大きなダイヤ乱れは解消した。しかし、利便性の問題は残った。

旧来方式の欠点は富山で顕在化していたが、宇都宮はその轍を踏んだ。宇都宮市は市民を対象に「富山ライトレール体験見学会」を2017~2021年に開催、参加者の意見・感想を市のホームページで公表した。その中に、「ICカード利用者以外の人(筆者注。現金利用者)の降車時に少し検討があっても良いのでは(とくに混雑時)」、「(現金利用者は)下車時、ワンマンの為1カ所の出口になっている。宇都宮でもワンマンでさらに長い車両になった場合に不便とならない配慮が必要」との意見があった。旧来方式の欠点を正確に見抜いていた。この懸念は的中し、開業した途端にダイヤが乱れた。市は、この市民の意見をどのように判断したのだろうか。

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