宇都宮ライトレール、その人気で露呈した"欠陥" 何の対応もせず放置すると評価は下がり続ける
成功のためには、①現金利用者も全ての扉で乗降、➁新設軌道区間の速度を向上、の2つが条件だ。そうすれば、LRT本来の機能と利便性が発揮され、LRTが理解されて根付く。
わが国はスマートな低床車両が走れば「LRT」と呼んできた。しかし、それだけでは旧来の路面電車と同じだ。利便性は旧来と変わらないため、「これがLRTなら、LRTは不要」との市民の声もある。
旧来の路面電車は利便性の低い少量・低速交通システムであり、第2次世界大戦後にアメリカ、カナダ、イギリス、フランスなどは見捨てた。しかし、路面電車は市街地での中量・短距離の面的輸送に適しており、中小都市では、都市交通の主役を担い得る。
スイス、ドイツなどでは、大戦後も路面電車を改善して活用してきた。必要不可欠の改善は運賃収受に「セルフ乗車」(乗務員は運賃収受にかかわらず、乗客のセルフサービスによる。わが国では「信用乗車」とも呼ばれた)方式の導入だった。最初にスイスのチューリッヒ市電が1966年に導入し、連接車を2組連結した全長42m、扉8つ、定員336人の路面電車がワンマン運転で走り出した。乗る時も降りる時も最寄りの扉で可能になるなど、利便性の高い中速中量交通システムに生まれ変わった。「セルフ乗車」は1960年代末までに西欧に普及した。
西欧の状況を見て、路面電車を見捨てたアメリカ、イギリス、フランスも1970年代末から改善された路面電車の導入を行った。アメリカはこれをLRTと呼び、旧来の路面電車との違いを強調した。
自動車への過度の依存による都市の諸問題の解消に、LRTは人と環境に優しく、まちづくりの道具となる機能と利便性を備えた交通システムとして脚光を浴びた。さらに、1980年代には低床車が加わり、LRTの位置付けは盤石となり、世界中で導入されている。
台湾でLRTの導入が進む
アジアでLRTを導入していたのは長らく香港(新界地区。1988年)だけだったが、台湾の高雄市(2015年にプレ開業。以下同じ)、新北市淡水区(2018年)、同市新店区(2023年)に開業した。欧州のLRTと同様に乗客のすべてが最寄りの扉で乗降できる本物のLRTだ。片道乗車券(わが国で言う現金)利用者は停留所の券売機で乗車券を購入してから乗車する。
開業から3カ月経った宇都宮ライトレールのその後を見聞した。3カ月目の利用者数について、平日は約1万3000人で当初予想の108%、1カ月目の104%、土休日は1万1000~1万2000人で当初予想の261%、1カ月目の74%、また、ICカード利用率は平日約94%、土休日85%と公表されている。
開業当初の大幅なダイヤ乱れは、10月23日のダイヤ改正(多客時間帯の折り返し時間を増加など)によって今は落ち着いている。
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