グーグルとアマゾン、「DNA解析」を巡って熱戦 クラウドの最先端で起きていること

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ゲノムクラウド サービスの見込み客への売り込みには、その解析ツールによって、例えば創薬ターゲット、または疾患リスクを高確率で予測できるDNA変異など、遺伝子学的“金”をデータの海から見つけ出すことができるという側面もある。そのような研究を通じた発見は、そのデータの所有者のものとなる。

「大学のローカルサーバーでは、計算機負荷の重い解析に何カ月もかかってしまうかもしれないが、Amazonの場合、必要とする速度でのデータ解析が可能だ」(アルツハイマー プロジェクトのリーダー、ペンシルバニア大学のゲラルド・シェレンバーグ博士)。

大学のセキュリティは穴だらけ

もう1つのセールスポイントはセキュリティだ。カリフォルニア州アーバインのサイバーセキュリティ会社、サイランスの主任研究員、ライアン・パーマー氏によれば、大学のセキュリティは「多くの場合、穴だらけ」であり、また、連邦政府のコンピュータのセキュリティも「最上級とは言えない」という。

大学や製薬企業の研究プロジェクトはゲノムクラウド サービスの最大の顧客だが、今後10年間で、臨床での応用がこれを上回るだろうとGoogle Genomicsの技術責任者、デヴィッド・グレイツァー氏は述べる。

それぞれの医師は、さまざまな疾患リスクに対する患者の遺伝子特性の影響、または薬物治療に対して予想されるその患者の反応を理解するために、日常的にクラウドサービスへアクセスするようになるだろう。

「我々は現在、転換期にある」とGlazerは言う。

Amazon Web Servicesのデータサイエンス部長、マット・ウッド氏は、現在のゲノムクラウドへの需要を「パーフェクトストーム」と捉えている。生成されるデータの量に比例して、共同研究の必要性と、ゲノム科学を臨床ケアに取り入れる動きが高まっているのだ。

クラウドへのアクセスがなければ、現代のゲノム科学は停止してしまうだろうとDNAやデータの専門家は言う。

生命情報学の専門家、サンフランシスコ、カリフォルニア大学のDr. Atul Butteによれば、さまざまな大学の研究者がNIHその他の遺伝子データを共同で研究している現在、研究者は、自分たちのコンピュータを相互につなぐ方法を理解する必要がないのだという。今年3月、NIHは主要な研究に対してクラウドを開放し、科学者たちが重要な遺伝子データをアップロードできるようにした。

「新たな時代が到来した、というのが私の感想だ」とButteは述べた。

6月5日ロイター(ニューヨーク)

(記者: Sharon Begley、Caroline Humer、編集: Michele Gershberg、John Pickering)

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