根拠あやふやな「15%」 関電、節電要請の波紋
「15%の具体的根拠や関西電力自身の努力を示したうえで、必要性を説明してほしい」。唐突な呼びかけに自治体トップからは批判が相次いでいる。自主的に5~10%の節電を呼びかける方針を決めていた関西広域連合では、連合長の井戸敏三兵庫県知事が関電に説明を要望。橋下徹大阪府知事も「根拠がない」と憤慨し、15%は原発が必要という脅しだ、と猛烈な関電批判を繰り広げている。
企業側の反応も複雑だ。「前向きに対応する」(パナソニック)と受け入れを表明するのは珍しく、多くは「具体策を策定しているが15%に応えられるか未定」(ダイキン工業)と、不満と困惑が入り交じる。シャープのように「半導体や液晶パネルなど24時間稼働の工場は除外してほしい」と訴える企業もある。
節電目標見直しも
要請が法令に基づく強制ではない代わりに、例外のない「一律15%」削減なのも混乱に拍車をかけている。
鉄道各社は駅舎の消灯や冷房温度引き上げなどの施策を打ち出すが、「15%にはダイヤ間引きを実施しないと難しい」(近畿日本鉄道)。関電は鉄道や病院など公共性の高い事業者や個別の事情に配慮することを表明。鉄道には10%削減を打診し、「一律15%」の信憑は揺らいでいる。
自治体や企業の不満が膨らむ中、今後関電が節電目標を見直す可能性も否めない。同社は電力確保に向けて揚水や火力発電所の出力向上を図っている。「それらの上積みは小規模」(関電)とはいうものの、事故で停止中の火力発電所の運転再開や他社からの融通などで供給力が増す可能性も残る。需要想定についても、前年並みと見込んでいるのは電力会社のうち関電だけで見直す余地が大いにある。
節電実施が2週間後に迫る中、企業や自治体の協力取り付けは急務。だが今までの説明だけでは、原発の再稼働と同様に電力不足でも関電は隘路に入り込みかねない。
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(鶴見昌憲 =週刊東洋経済2011年6月25日号)
photo:Hirorinmasa Creative Commons BY-SA