半導体商社再編で「旧村上ファンド」が台風の目に リョーサンと菱洋エレクトロの統合でも存在感
声明では半導体商社業界の再編には賛成としている。だが、統合後の新会社1株に対してリョーサン株1.32株を割り当てる統合比率が「リョーサン株主にとって不当」との考えを示した。
今回の経営統合は特別決議事項にあたり、可決には3分の2(67%)以上の賛成が必要。逆に言えば、否決に必要な34%のうち約11%を旧村上ファンドが握っている状態で総会当日を迎えた。
とはいえリョーサンの筆頭株主は、統合相手である菱洋エレクトロ。リョーサン株を18%保有する。議決権行使助言会社のISSやグラスルイスも統合議案に賛成を推奨した。
「機関投資家には統合の意義に納得してもらえていて、手応えはある」。リョーサンの稲葉社長が事前の票読みで自信を示していたとおり、実際にフタを開けてみれば、賛成率は82%となり統合は可決された。
反対の意思表示が必須だった?
「不当」な比率での統合が決まってしまったことで、旧村上ファンドはこれからどう動きうるのか。
「そもそも、今回の議案を本気で否決しにいく気があったのかは疑問だ」。そう話すのは企業の買収防衛などに詳しいIBコンサルティングの鈴木賢一郎社長だ。
というのも、旧村上ファンドが反対の声明を出したのは、両社の統合比率が発表されて2カ月近く経ってからだ。総会まで2週間しかなく、ほかの株主の理解を醸成するのに十分な期間とは言いがたい。
加えて反対声明には「弊社は、本総会について議決権の代理行使の勧誘(委任状の勧誘)を行う予定はなく、本書面についても議決権の代理行使の勧誘を行う意図はありません」と記した。控えめなスタンスに映る。
もし本気でなかったとすれば、その意図は何なのか。考えられる理由の1つが「反対株主による株式買取請求権」の行使だ。
これは、組織再編などに反対した株主が、会社に対して保有株の買い取りを請求できる権利だ。権利を行使するためには、株主総会の前に会社に対して反対であることを表明したうえで、総会で実際に反対票を投じる必要がある。
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