コスモ株を電撃取得、岩谷産業は「救世主」か? 旧村上ファンドとの対立収束も厳しい市場評価

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岩谷産業は、一見コスモにとって「救世主」にも見える。だが、鈴木氏は「臨時株主総会ではコスモ優勢との観測もあった。その矢先に株を買い取った岩谷産業はホワイトナイトではない。旧村上ファンドは高値で売り抜けることが目的だが、岩谷産業は事業会社だ。村上氏以上に手強いストラテジックバイヤー(戦略的買収者)になる」と話す。

12月8日、日本経済新聞に掲載されたコスモエネルギーホールディングスの広告記事(編集部撮影)

従来からLPガスなどで取引がある岩谷産業とコスモは、2022年3月に水素事業の協業検討で基本合意し、2023年2月に水素ステーション事業の普及を目的に合同会社を設立した。11月にも水素関連のエンジニアリングで新会社を立ち上げている。

岩谷産業がコスモ株の取得を発表したのは12月1日。一方、コスモが「本譲受けを前向きに捉えております」とのリリースを出したのは12月4日。取締役会で臨時株主総会の中止を決議したのも同日だ。友好的であれば事前にすり合わせをして、両社が同時にリリースを発出するのが一般的だ。

また、8月には経済産業省から「真摯な買収提案に対して真摯に検討」を促す行動指針が発出されたことも岩谷産業の背中を押した可能性がある。「コスモが『敵対的』と声を上げにくい状況で株を買い取った。岩谷産業の巧みな戦略が垣間見える」と鈴木氏は言う。

今のところシナジー効果は不明

一方、岩谷産業はコスモ株取得のために借り入れた1053億円もの資金を1年以内に返済しなければならない。返済資金のために増資もありえるとの観測も出て、12月1日に7141円だった岩谷産業の株価は13日には6234円まで下落した(終値)。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の荻野零児シニアアナリストは、「数字上の見た目は問題ないが、今のところシナジー効果が不明だ」と評価する。

コスモの在庫影響を除く2023年度純利益予想は620億円。岩谷産業はその約20%の120億円超を営業外利益に取り込める。5年間で4700億円の投資枠内でもある。だが、岩谷産業は1000億円超を投じて、コスモと何をしようとしているのか。

ある業界関係者は、「燃料電池自動車普及の一手として岩谷と親密な自動車会社の思惑が背後にあるのか、純粋に牧野明次会長の深い思い入れなのか。それ以外に理由が見当たらない」と話す。

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