富野由悠季が断言「アニメブームは今が頂点」 デジタル化、いい作業環境が作品性を劣化させる

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

アニメ自体は、なくならない。ただ、今以上に優れた作品が出てくるかというと難しいと思える。手描きのアニメからデジタルに切り替わった後のディズニーの作品は、「え?」と落胆するようなものばかりになったが、そういう再生産になっていくから。

宮崎駿監督アニメのような作品が、古典的な作品として、今後も見られ続けていくと思う。

「ガンダム」シリーズも歴史に残るのではないかって? うぬぼれるつもりはないが、1行ぐらいは記されるかもしれない。

でも実をいうと、「ガンダム」という作品にぼくが込めた、社会論とか戦争論といった根幹的なメッセージは、ガンダムという巨大ロボットの造形に邪魔をされ、思うように伝わっていないように感じる。子どもは恐竜が好き、巨大ロボットも好き。その嗜好性の延長に「ガンダム」の人気がある。不本意なことに、視野の狭いメカフェチに支えられてきた部分がある。作品単体でみたら『ちびまる子ちゃん』『ワンピース』の人気にはかないませんね。

『機動戦士ガンダム』原作者の富野由悠季監督(撮影:梅谷秀司)

偽物を識別するヒトの力

──AIの制作への応用が進んでいます。アニメーターの仕事も今後奪われていくのでしょうか。

棋士の藤井聡太さんが、以前、こういうことを語っていた。中学生のとき、将棋のAIソフトをプレーして、とても強いとは思ったけど、どこか疑わしいところがあった。だから自然と、自分で考える癖が身に付いた、と。

人間のすごい能力は、「何か違う」と識別する感覚があること。ぼくはその感覚を信用している。

演劇も、同じ演目であっても微妙にハマる芝居とか、ハマる役者というものがある。今後アニメがデジタル化し、AIの導入が進んでも、機械による創作は、それほど簡単に人間のレベルを超えるところにはいかない。人間はリアルなものが好きだから、リアルじゃないものを見分けてしまう。するといずれ人の仕事が見直され、アナログな線画に戻ると思うな。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事