シンガポールでは久しぶりにゆっくりして帰ってきた。そして4日の新年社員総会に何食わぬ顔で出席したら、いきなり役員に言われた。
「谷くん、お前、正月寛平と海外行ってたやろ」
「どうして知ってはるんですか?」
「寛平の後ろでテレビにしっかり映っとったわ」
やっぱり。
そのシンガポールでは朝からゴルフに行った。キャディなし、途中休憩なしで1ラウンド回るのである。なんせ赤道直下の国だから、12月や1月といえど35度近い気温だ、午前中でないと暑くて回ってられない。
ゴルフ場で昼ご飯を食べてビールを飲んで、ぼくらはタクシーでホテルに戻るのであるが、寛平さんは走って帰る。ゴルフだけでもバテバテなのに、太陽が照りつける下を寛平さんは走るのである。どんな体力をしているのだと思った。翌日も同じだ。寛平さんは汗びっしょりになってホテルに戻ってきた。
走るようになって、短気な性格が変わった
寛平さんのすごさはなかなかわからない。どこまでが本当で、どこからが冗談なのかわからない。一見すると何にも考えてない人のように思うが、実はなかなか深く考えている。ほんとに懐の深い人なのだ。
寛平さんは誰にも優しくて、穏やかで、人の悪口を言うのをほとんど聞いたことがないが、若い頃はやんちゃで、気が短くてすぐに腹を立てていたという。
そんな寛平さんが変わったのは、走るようになってからだという。
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