Z会の傘下に入る「栄光ゼミナール」の本音 塾再編が進む理由は少子化だけじゃない

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背景にあるのは、全国的に進む少子化の流れだ。市場全体が先細る中、通信教育側は学習塾を傘下に収めることで自社教材の販売先を獲得できる。一方の塾側は、教材調達のコスト削減に加え、通信教育のブランド力を集客に活用できるなどの利点がある。

とはいえ今回の一件は、これまでと少し事情が異なる。栄光HDの地盤は、人口の流入超過が19年間続く首都圏。地方の学習塾ほど切羽詰まった状況にあるわけではない。業績もここ数年は頭打ちながら高水準を維持している。それでも今、増進会の傘下に入ることを選んだのはなぜか。

業界内には、今回のTOBを「特殊事例」とする声もある。栄光HDでは2008年に生じた社内対立をきっかけに、同社経営陣と増進会、それに筆頭株主である進学会による経営権争いが起きていた。

関係者によると、2014年末から栄光HD主導で事態打開に向けた動きが進み、今年2月下旬にスキームの大枠がまとまったという。つまり、お家騒動の7年越しの帰結、というわけだ。

金城湯池に迫る大波

ただ、これは一面的な見方でしかない。今回の統合の大きな底流にあるのは、5年後に迫った大学入試改革だ。

国は2020年度から大学入試センター試験を廃止し、大学進学希望者を対象に、知識の活用力を問う新たな試験を年複数回実施する。また、2019年度からは高校2、3年生を対象に、学校での学習の達成度を測る試験を導入。これまでの入試一発勝負から、学力の積み重ねを総合的に判定し、合否を決める方式に転換する。

こうした変化は中学・高校受験にも影響を及ぼし、学習塾が培ってきた入試対策のノウハウの価値を低下させる。その一方、日常的・段階的な学力向上にはITの活用が有利に働くとして、ITに強みを持つ大日本印刷などの異業種が、相次いで教育産業への参入を打ち出している。

「資本の問題に時間を割いている場合ではなくなった」(栄光HD)。金城湯池だった首都圏にも、業界再編の波が押し寄せている。

「週刊東洋経済」2015年6月6日号<1日発売>「核心リポート05」を転載)

猪澤 顕明 東洋経済 記者

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、民放テレビ局の記者を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年に国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。2024年から「東洋経済オンライン」の有料会員ページを担当。

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