「アップルストア」日本進出20年、その変貌に迫る 担当役員ディアドラ・オブライエン氏が明かす
アップルストアは顧客の製品とのタッチポイントとして設計され、製品について顧客が最良の体験を得る場が目指されてきた。おそらくこれが、「最初の異例の顧客体験」の中身だったはずだ。
しかし現在、その顧客体験の目指す方向性は、極めて個別化されたサービスに落とし込まれる変化がもたらされた。
扱っている製品の多様化も背景にある。iPhoneも最新モデルから廉価版まで3世代が常時ラインナップされており、Apple Watchも膨大な数のバンドの組み合わせが存在する。テクノロジー製品でありながら、パーソナライズ性が極めて高くなったことと、顧客のニーズへの対応に応じて、アップルストアも変化を続けている。
生涯を通じた関係作りを目指す理由
オブライエン氏が強調するアップルストアが目指す「異例の顧客体験」。当初は触った瞬間の演出に注目してきたが、現在はパーソナライズにシフトしてきた。その中で、もう一つ大きなミッションとしているのが「ライフタイムバリュー」の向上だった。
「異例の顧客体験への努力は、顧客と生涯を通じた関係性を築き、それを維持することをゴールとしています。製品を買いたいとき、製品について学びたいとき、修理したいときなど、場面場面での異例な体験を揃えることを目指しています」(オブライエン氏)
その理由は、現在のアップルの、2030年に向けた地球環境保護に向けた取り組みにも関係がある。
アップルは気候変動や地球資源への配慮から、できるだけ製品を長く使ってもらう「長持ち」を、製品価値に追加した。できるだけ短い頻度で買い換えてもらうことを目指してきたテクノロジー製品とは、真逆の価値作りに舵を切った。
そのため、顧客にできるだけ長く顧客でいてもらうことが重要となり、直営店でも顧客の生涯価値に注目する「変化」を作り出したのだ。
中でも、下取り(Trade In)の強化は、直営店であるアップルストアでより多くの顧客に啓蒙したい活動であるとオブライエン氏は指摘した。
「アップルストアは、すでに100%再生可能エネルギーで稼働しており、われわれが生まれたときよりも良い環境を残せるようにするという、アップルの環境に対するコミットメントの一部となっています。
また下取りは、製品そのものの再利用や、使用している部材のリサイクルを実現する重要な活動です。また製品価値に応じた価格が維持されるため、下取りは世界中の顧客の間で支持されています。
顧客の皆様は、自分が現在使っているアップル製品に、どれだけの残存価値が維持されているのか、まだ気づいていません。そのことをお伝えすることもまた、直営店の役割だと考えています」
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