中国が目指すメタノール船舶燃料の「供給ハブ」 上海港の運営会社が国際海運大手3社と提携

✎ 1〜 ✎ 1351 ✎ 1352 ✎ 1353 ✎ 最新
拡大
縮小

この覚書に基づき、上港集団はCMA CGMおよびコスコグループの船隊向けに、中国の主要港でグリーンメタノールの調達、販売、(船舶への)補給などのサービスを提供する計画だ。

それだけではない。海運業界の内情に詳しい人物によれば、上港集団はデンマーク海運大手のA.P. モラー・マースクとも、2023年3月にメタノール船舶燃料に関する戦略提携の覚書を取り交わしたという。

グリーンメタノールは次世代の船舶燃料の本命とされている。写真はコスコグループが建造中の大型コンテナ船の完成予想図(同社ウェブサイトより)

A.P. モラー・マースク、CMA CGMグループ、コスコグループはいずれも国際コンテナ輸送の世界的大手であり、メタノールを燃料に使う大型コンテナ船を多数建造中だ。上港集団は3社との提携をテコに、上海港をアジア地域におけるメタノール燃料の供給ハブに発展させようと目論んでいる。

シンガポールの地位を奪えるか

従来型の船舶燃料に関しては、シンガポールがアジア地域の供給ハブの役割を担っている。シンガポール海事港湾庁のデータによれば、シンガポールの2022年の船舶燃料供給量は4788万トンだった。一方、中国の商品情報サイト、金連創のデータによれば、同年の中国の保税船舶燃料供給量は約2187万トンと、シンガポールの半分未満にとどまる。

本記事は「財新」の提供記事です

中国は海運大国であると同時に(風力発電や太陽光発電などの)再生可能エネルギー大国でもあり、グリーンメタノールの生産や供給に有利な条件がそろっている。

船舶燃料の(重油から)メタノールへの転換という潮流を利用して、国際海運業界におけるクリーンエネルギー供給の中心地となることができるか、今後の展開が注目される。

(財新記者:李蓉茜)
※原文の配信は11月14日

財新 Biz&Tech

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ザイシン ビズアンドテック

中国の独立系メディア「財新」は専門記者が独自に取材した経済、産業やテクノロジーに関するリポートを毎日配信している。そのなかから、日本のビジネスパーソンが読むべき記事を厳選。中国ビジネスの最前線、イノベーションの最先端を日本語でお届けする。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT