「進研ゼミ」のベネッセ、創業家が背中を押したMBO 今後は投資ファンドを含めた「トロイカ体制」に

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競争の激化もある。進研ゼミではタブレット教材を選択できるようにしたり、会員の答案に添削指導をする「赤ペン先生」業務をデジタル化したりといった対応を進めてきた。ただ、ジャストシステムが運営するタブレット学習「スマイルゼミ」や、リクルートが展開する映像授業「スタディサプリ」など有力な競合が台頭する中、優位性を示せなかった。

「いちばん影響を受けたのがベネッセとZ会」とみるのは、学研ホールディングスの宮原博昭社長だ。「われわれの塾・教室はさほど影響を受けていない。勉強への意欲低下や将来への不安に対し、子どもの性格を知っている講師が直接対応できる。それがリアルの教室・塾の強さ」。本決算の会見で宮原社長はそう述べた。

高校講座も変化の波に直面する。大学入学者の過半を総合型選抜(旧AO入試)、学校推薦型選抜の合格者が占める時代。こうした入試では、高校時代の活動内容や進学希望先の大学・学部で探究したいことが問われる。小林社長も「ニーズの多様化・多層化に対して、進研ゼミという1つの商品では応えきれていない」と認める。

国内教育のテコ入れをどう図る?

もちろんベネッセも、現状に手をこまぬいているわけではない。

ダイレクトメールの送付を減らし、体験型教材を送付するなど営業手法の見直しを進める。進研ゼミでは「ニンテンドースイッチ」とタイアップした教材など、学習意欲喚起のための取り組みを強化。2024年からは生成AI(人工知能)を活用した質問サービスや、日々やるべきことを管理するスマートウォッチを導入する予定だ。

難関校受験講座の「エベレス」、プログラミングやアートなどオンラインの習い事を展開する「チャレンジスクール」といった、多様化するニーズに応える商品も投入。さらに、首都圏の中学受験市場にも専門塾「進学館√+ (ルータス)」 を開設して参入した。従来のマス層と意欲の高い層とで二極化するニーズを両にらみしている状態だ。

足元では大学・社会人向け教育の成長が顕著で、コロナ禍でダメージを受けた介護施設の入居率も改善基調にある。ただ現状は、「介護・保育」「大学・社会人」事業より、「国内教育」が売上高、営業利益ともに勝っている。

「MBOの目的は進研ゼミの立て直しだけではない」。小林社長はそう述べたが、屋台骨である進研ゼミの復活の道筋を早期に示す必要があるだろう。

常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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