「進研ゼミ」のベネッセ、創業家が背中を押したMBO 今後は投資ファンドを含めた「トロイカ体制」に

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創業者の長男で2代目社長、会長を務めた福武總一郎氏、現取締役の英明氏は、2022年12月から半年超、EQTと議論を重ねた。EQTは約37兆円の運用資産を有するプライベート・エクイティファンドで欧州、アジア、北米の20カ国に拠点を持つ。教育・介護分野への投資実績やデジタルのノウハウが豊富なうえに、理念がベネッセと近かったという。

ベネッセの前身は通信教育などをなりわいとしていた福武書店。創業家には、「中間層をターゲットとする旧来型の通信教育の市場は縮小することなどから、これまでの延長線上ではない事業変革が不可避」との考えがあったという。

変革事業計画について小林社長は、「不十分だったという認識はない」と強調するが、業績は伸び悩んでいた。

ベネッセホールディングス小林仁社長
小林仁社長は国内教育事業を担うベネッセコーポレーションの社長も兼務する(撮影:大澤 誠)

2022年に語学教室「ベルリッツ」を売却するなど構造改革を進めてきたものの、2023年3月期の連結営業利益は206億円にとどまる。コロナ禍の影響からは回復傾向にあるが、ピークだった2011年3月期の428億円から半減した。

とくに低迷が深刻だったのが、通信教育「進研ゼミ」だ。2014年に起きた個人情報流出事件で会員数が急減。小学・中学・高校の3講座合計の4月時点会員数は2023年で160万人と、2014年と比べ約4割減った。

マス層向けの従来型が時代の波に直面

進研ゼミで主力の小学講座・中学講座は、教科書に沿った内容を家庭で自律的に学ぶことをコンセプトにしたものだ。

小林社長は、進研ゼミ苦戦の要因として「子どもの学習意欲の低下」を挙げる。ベネッセ教育総合研究所と東京大学社会科学研究所の共同調査では、コロナ禍を経て「勉強する気持ちがわかない」と回答する子どもがコロナ禍前より増加している。

だが、首都圏の中学受験者数は、2023年入試で過去最多を更新するなど高水準が続く。創業家が危機感を持つように、マス層に向けた従来型の通信教育が時代のニーズに合わなくなってきている点が大きいだろう。

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