しかし、啓子さんが受けたダメージも大きかった。地元の小さな町は「近所の目がある」のでバツイチで帰りにくい。仕事も見つけにくいだろう。あまり良い思い出はないが土地勘は少しある名古屋で金融機関の派遣職を見つけ、現在は同じ会社で正社員として勤務している。
「当時はちょっとした躁状態だったのだと思います。何かしていないと不安で、スキルアップのための勉強をしたり、いろんな人と会うためにオープンな雰囲気の飲食店に行ったり。雄太さんと出会ったお店もその1つです」
雄太さんの第一印象は…
雄太さんの第一印象は「中性的」だったと振り返る啓子さん。180センチ60キロという長身細身で、体のラインを強調するような黒い服を着ていたからだ。
「京都で花魁のコスプレをしたときの写真も見せてもらいました(笑)。多様性の時代だから、私も視野を広く持つべきだ!と思ったのを覚えています」
インスタグラムをフォローし合った2人は飲み仲間になったが、コロナ禍の緊急事態宣言によって飲食店が軒並みクローズ。雄太さんは啓子さんを「宅飲みしますか?」と誘った。雄太さんの自宅で2人きりで過ごすことになる。
「雄太さんは女性みたいな雰囲気だし、私はおそらく恋愛対象じゃないから大丈夫だろうと思って、遊びに行くことにしました」
その夜は楽しく飲み交わすだけで終わったが、会話の中で雄太さんはストレートの男性だと判明。しかも、啓子さんのことを当初から「キレイな人だな」と思っていたらしく、年齢差を聞いても驚かない。
雄太さんは大学卒業後、志望分野でのエンジニアになるために愛知にやってきた。女友だちはいるけれど、恋人がほしいとは思わずに過ごしてきたという。
「社会人になってからお付き合いする人とは結婚するものだと思っていました」
一方の啓子さんは再婚するつもりはなかった。彰さんとの苦しい結婚生活で男性不信気味になっており、親戚づきあいなども煩わしく感じていたからだ。
「でも、雄太さんは思いやりがあっておっとりとしていて真面目な人です。ご両親や弟さん妹さんとのグループLINEがあるぐらい家族仲が良くて、育ちがいいんだなと思っていました。そんな彼に結婚を望んでもらっていた頃、父ががんのステージ4に。地元で子育てをしている姉からは『お父さんを安心させてあげて』と言われました」
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