テレビ局の放送収入激減と「ジャニーズ問題」 「70年間築き上げてきたやり方」はもう続かない
放送事業は視聴率をベースにしている。特にスポットCMはGRP(Gross Rating Point)という視聴率の合計値を基に取引されるので、視聴率ダウンはそのまま売り上げ減につながるのだ。企業はスポットCMを発注する際、例えば「関東で1000GRP流したい」といったオーダーをする。CMを流す時間の視聴率の合計が1000%になるようにテレビ局は調整するわけだ。10%のCM枠なら100本だが、5%の枠だと200本必要になる。視聴率は売り物そのものなのでPUTが下がると売り上げも下がる構造だ。
第2四半期の放送収入とゴールデンタイムPUTの推移を合わせてみると、ここ数年で起こったことがわかる。
2020年度はPUTが39.1%に上がったが放送収入は激減、それが2021年度にはPUTが36.6%に下がったのに放送収入は持ち直した。だが2022年度、2023年度とPUTも放送収入も下がる一方。今後の傾向が決定的になり、人々の「放送離れ」が確定した。同じ傾向が今後ずっと続くだろう。
これを補う可能性が、キー局が共同でスタートしたTVerや、サイバーエージェントがテレビ朝日と組んだABEMAなどのテレビ局が携わる配信サービスにある。企業はCM投下の意欲を失ったわけではない。最近は、スマホを落とし所とする新サービスが続々登場してテレビCMでアプリのダウンロードを促している。
放送でなくても配信でCMを流したいと考える企業は多い。テレビで流れる配信CM市場はCTV(Connected TV)市場と呼ばれ成長が期待される。そのニーズに見合うだけの視聴者をTVerやABEMAが獲得できるかが今後の課題だ。ただ、来年一気に放送収入の落ち込みをカバーできるはずもなく、何年もかかるのは間違いない。
仮にテレビ局が配信サービスで再び売り上げを上げるとしても、そうなるまでの間にローカル局の中にはなくなるところもあるかもしれない。いや、キー局がなくなる可能性だってないとは言えない。これから数年間、再編の嵐が吹き荒れると、放送局の人々自身がすでに考え始めているようだ。
テレビ局が抱える「ジャニーズ事務所問題」
ところで、放送収入とは別にテレビ局が抱える悩みが、ジャニーズ事務所問題だ。11月12日の午前10時からテレビ朝日が1時間かけて自己検証番組を放送した。他のキー局とNHKは放送済みなので、こちらも決算同様に出揃った形だ。60分間丸々使ってCMも一切入れずに放送したことには本気を感じたが、放送後にX(旧Twitter)を見ると、すこぶる評判が悪い。
いちばん最後の割には、他の局がすでに行った局内のヒアリング結果を見せ、日本テレビがすでにやったように報道や編成関係の局長が顔出しでコメントし、唯一新しかったのが社長が自ら顔出しでコメントしたことぐらい。通り一遍のことをおさえた構成だ。ネットで前々から言われていた「ミュージックステーション」にジャニーズ事務所のライバルグループが出演してこなかったことについてはまったく言及がなかった。まだ忖度しているのかと言われても仕方がないだろう。
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