踊り場か成長の終わりか、テスラが迎える「岐路」 EV市場の競争激化、迫るBYD。カギを握る新車種

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車載バッテリーやモーターといった主力部品を内製しておりコスト競争力も高い。BYDの2023年7~9月の営業利益率は8%とテスラを上回った。

EVとPHVの二刀流で、高級車種から手ごろな車種まで顧客層が幅広く、新モデルを次々に投入するBYDに対し、テスラはほぼ4車種、しかも主力のモデル3は量産開始から6年が経過する。勢いに差が出るのはやむをえないのかもしれない。

BYDは「ジャパンモビリティショー」にも出展。大きな注目を集めていた(撮影:鈴木紳平)

BYDは東南アジアや欧州向けの輸出を拡大している。今年1月には日本へも参入し、コンパクトSUV(スポーツ多目的車)「ATTO3」やコンパクトハッチバック「ドルフィン」を投入している。タイとブラジルでは乗用車の工場を建設するなど海外進出に拍車をかけている。

中国メーカーという地政学上のハンディキャップはあるものの、当面、BYDの拡大は続きそうだ。

カギを握る新工場とサイバートラック

もちろん、テスラが成長をあきらめたわけではない。今年3月にはメキシコで新工場「ギガファクトリー」の建設も発表したほか、インドでのEV生産についても前向きな姿勢を示している。

ピックアップEVの「サイバートラック」はアメリカのユーザーに受け入れられるのか(写真:テスラ)

イーロン・マスクCEOが「過去最高の製品」と評するサイバートラックの生産が2023年7月からテキサス工場で始まっている。「プロトタイプから量産にいたるまでが難しい」(マスクCEO)ため立ち上がりに不安は残るが、2025年には25万台まで生産を拡大する計画だ。

ピックアップトラックはGMとフォードが得意とする車型で利益率が高いことで知られる。これが成功すれば再び勢いを取り戻せるだろう。

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井上 沙耶 東洋経済 記者

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いのうえ さや / Saya Inoue

商用車・部品メーカーを担当。大学時代は写真部に所属し、社会学を中心に学ぶ。趣味は、漫画を読むこと、映画のサントラを聴くこと。

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