楽天の今期は過払い金問題で巨額特損も、3期ぶりの赤字転落は回避か
楽天は、長らく懸案となっていた個人向け金融の過払い金問題に決着を付けた。楽天は6月2日、今2011年12月期に約1000億円の損失を計上して、クレジットカード事業を再編すると発表した。東洋経済では、文末の表のように今期最終損益は均衡圏になると見ている。
事業再編のポイントは、同事業を手掛ける子会社の楽天KCを、05年の買収後に開始した楽天カード事業(クレジットカード)と、買収前から手掛けていた個人向け貸金事業に分割、貸金事業をJトラスト<8508、大証2部>に売却するというもの。楽天KCへの増資や債権放棄を実施したうえで貸金事業を売却するため、実質的に持参金をつけたうえでJトラストに譲渡することになる。これにより楽天KCののれん減損も含め、700億円の特別損失を計上する。
また、再編に伴って繰延税金資産の取り崩し200億円、継続する楽天カード事業の貸倒引当金の見積もり方法の変更で100億円を追加引き当てするため、合計で1000億円の損失を見込む。連結最終損益ベースでは330億円の税効果を織り込み、670億円のマイナスと発表した。
今回の再編によって、グレーゾーン金利過払い金問題の主因となっていた貸金事業が切り離されるため、「今後、過払い金返還はほぼなくなる。楽天カードで発生したグレーゾーン金利分も保守的に計算した100億円を追加で引き当てるため、事実上、過払い金問題はなくなる」(楽天)と説明する。
「今後は、楽天市場など楽天のネット事業と結びついた楽天カード事業の収益性のみが業績に反映される。楽天カードの強みは、ネットを使った低コストの新規顧客の獲得や、楽天市場での利用など8割近い稼働率。カード業界トップクラスの収益性を実現できる」(楽天)と自信を見せる。
そもそも楽天が05年に福岡地盤の中堅信販会社を買収し、貸金・カード事業に進出したのは、グレーゾーン金利による高い収益性を見込んでのこと。通販や証券取引など自社のネットビジネスと連動させることで成長を狙っていた。ところが、グレーゾーン金利の廃止という「後出しジャンケンのような規制」(楽天幹部)で、巨額の過払い金返還を背負うハメになってしまった。