東海道新幹線の「異常時対策訓練」何が変わったか 深夜の営業線を使って、車内の不審者に対峙
今回の訓練の参加人数は約220人。JR東海や警察だけでなく、ほかの鉄道会社の関係者も訓練の様子を見学するためにやってきた。参加者たちを乗せて東京駅を出発した列車は23時32分に品川駅に到着した。車内では参加者向けに訓練の説明がされ、「訓練開始まで30分ほどお待ちください」のアナウンス。そして品川駅を23時55分に発車すると、ほどなくして「訓練を開始します」と放送があった。手元の時計を見ると0時ちょうどだ。
訓練は12号車で行われ、車内には乗客役の参加者が座っている。どこかに不審者役の参加者も座っているはずだ。
0時02分。車内の真ん中あたりでスマホのスピーカーから発せられていると思われるシャカシャカした音楽のノイズが聞こえてきた。12号車の10番D席に座っていた乗客役の男性が、通路越しのC席に座っている乗客役の男性に「音が漏れていますよ。音量下げてくれませんか」と注意すると、C席の男性は「うるさい」。両者の間で口論になった。そして、C席の男性がおもむろに立ち上がると「殺すぞ、てめえ」とナイフを振りかざしてD席の男性を威圧した。
「不測の事態」新横浜に臨時停車
「ナイフだ」「キャー」。周囲の乗客たちが隣の11号車や13号車に逃げ出した。逃げる途中に非常停止ブザーを押す人もいた。ブザーを押されたことを示すピーピーという警報音が車内に鳴り響く。車内に取り残されたのは不審者と負傷者などごく少数の乗客だけだ。
複数の非常停止ブザーが同時に押されたことで、運転士は不測の事態が起きたと判断した。そして、新たな方針に基づき、その場で緊急停止させるのではなく、最寄り駅に向かうため速度を時速30km程度まで落とす程度にとどめ、指令と打ち合わせを始めた。一方、乗務員やパーサーは12号車の両端のデッキから車内の様子をうかがい、不審者の人相や服装について説明したり、車内に取り残された人がいないかを確認しあったりするなど、グループ通話システムで情報共有する。運転士も防犯カメラの映像を使って12号車の様子をチェックし、指令に状況を報告する。
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