日経平均が3万円を割れたらどうすればいいのか 相場は「陰の極」に達している可能性がある

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さて、話は変わるが、最近、オプション取引だけでトレードをしている知人から、妙なことを言われた。彼が注文を出すと、どこからともなく必ず誰かの注文が別に出てきていて、板をさらわれる(注文を出しても成約できない)というのだ。

トレーディングで勝つ方法の1つに「大口注文につけ」がある。だが、もし大口注文の前に自分の注文を出せたらこれ以上の必勝法はないが、そうはいかない。情報の世界ではあるが、それをやればインサイダー取引となる。注文執行システムの中で、インサイダー取引など普通に考えたらありえないが、AIの世界ではあるのだろうか?

「今年最後の重要な1週間」がやってきた

証券取引所のシステムが今のように自動化する前は、東京証券取引所には大きな体育館のような立会場があった。そこでの注文の流れは、投資家→証券会社→立会場の電話ブ-ス→場立ち→才取(さいとり)会員(12のポストの中におり、注文を付け合わせる仲介係)という流れだった。

電話ブースに入った注文を、手サインで各社の場立ちに伝え、その注文伝票を各ポストに走って才取会員に渡して注文が完成する。その喧噪の中でポストに張り付いている場立ちたちがいた。

彼らは他社の手サインを見て、張り付いている自分のポストの銘柄の注文で、もし大口のものがあれば、その場立ちが走ってくる前にその銘柄を買って(売って)、直後に入る注文にぶつける。

つまり「わずかな利益のかすめ取り」だが、これは100%儲かる手法で、当時、張り付いている場立ちは「板付きバッタ」と呼ばれていた。バッタは昆虫のバッタとバッタ屋のバッタをかけたものだ。一方、大阪の北浜では、板についているから「かまぼこ」)と呼ばれていた。このようにアナログ取引では可能だったことが、AIの世界でもできるのか?

「そんなことは取引所のAIがチェックできるはずだ」のという別の知人の言もあるのだが、私にはわからない。ただ、最近の自動取引の暴走を考えると、何かあるのでは、との気分にもなる。

最後に、30日~11月3日は日本製鉄(5401)やトヨタ自動車(7203)など、日本企業の大所の決算発表が本格化する。また日米英を筆頭に、世界の金融政策会合が開かれる。月の第1週がやって来るので、雇用統計など、アメリカの重要経済指数も多数出る。今年最後の、そして最も重要な週になると見る。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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