虎屋が古くならないのは、なぜなのか

正統派和菓子の老舗は立ち止まらない

――2020年の東京五輪開催が決まり、和菓子に関心を持つ外国の方も増えると思います。説明する工夫などはどうされていますか。

店頭では、英語のほか、中国語、韓国語のご案内パネルを順次展開させていますし、パンフレットも多言語で用意しています。パッケージに英語を併記した商品も拡大させており、かなり積極的に取り組んでいます。

パリ店の8~9割は日本人の方以外

――外国人のお客様は多くなっていますか。

はい、特に銀座の店では顕著です。パリの店を1980年からやっており、今年で35年です。パリは15年から16年で転換期があって、それまでは日本のお客様に多く来ていただいていましたが、今は8~9割が外国人のお客様です。何世代にもわたってご来店いただいている方もあり、小さいお子さんの手を引いたお客様の中には、「自分がこれぐらいの年齢の時に親に連れてきてもらったので、自分も子供を連れてきた」という、聞いているとうれしくなるお話がいくつもあります。

ようやく根付いてきたように感じますし、「虎屋は日本にも店があるのか」と言われたりして、日本のPRも一生懸命しないといけないなと思ったりもします。

――黒川社長の大切にしている経営哲学や、従業員の皆さんに常々伝えていることなどはありますか。

長い歴史に敬意を表していますが、大切なのは今だと強く思い、社員にも常々言っています。いまのお客様にいかに喜んでいただけるか、そのためにすべきことを絶えず考え、実行していかなければいけません。味についても、「昔から味を変えていない」というと、「それはすばらしい」となりますが、いくら昔の味でも食べておいしくなくては意味がありません。いまの方に「これはおいしい」と言っていただけるものを作らないといけない。ですから、味だって変えていいと思うのです。

ただ実際に変えたものは、そんなに多くはありません。それは、先人が作ったそれぞれの菓子が相当完成度の高いものだったからです。甘さを減らすといっても、単に砂糖を減らすだけではなく、ほかの材料とのバランスがあってこその味ですから、砂糖を減らしただけではおいしくはありません。

今の虎屋の味を言葉で表現すると「少し甘く、少し硬く、後味よく」です。お客様から「虎屋の菓子はどういう味ですか」「ほかのお店とどう違うのですか」と聞かれたら、言葉で説明できるようにと社員にも言っています。いま我々が求めている虎屋の味とは、そういう風に表現できると思います。

――若い人のアイデアを積極的に採用することも実行されています。

「若い者はだめだ」ということがいつの時代も言われ、私も言われましたが、生前交流のあった本田宗一郎さんは「若いやつに任せればやるんだよ」と常々おっしゃっていました。ですから、私もなるべく若い人に任せたいと思っていますし、実際に任せると見事にやり通してくれます。東京・六本木の東京ミッドタウン店の店舗立ち上げリーダーは20代の若手女性社員でした。

――女性幹部の活用や、ワーク・ライフ・バランスなどにも積極的に取り組まれています。

パリ店での経験もあり、かなり早い段階から取り組んできました。約7割の社員が女性ですし、女性役員も3人います。課長の数も多くなっています。

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