26年外資勤務「FIRE=幸せ」と限らない残酷な現実 意外と大きい「メンタルダメージ」その中身は?

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こちらが気を利かせて普段だと難しい風呂の排水溝の掃除などをして、つい久しぶりに達成感を覚えて「汚かったところをこんなにきれいにした」などと言おうものなら、そんなつもりはなくても「こんなに汚いまま放置してきた」とあたかも妻を責めているようにも受け止められかねない。

さりとて、黙って気づきにくくて手間のかかるところの掃除をしても、「そもそも私が掃除していたのできれいで当然」という思い込みもあり、なかなか気づいてもらえないうえ、「いつも何も手伝ってくれないわね」などと言われたりもする。

定年後だと、子どもが手離れしていて夫婦で旅行に行くなど、妻にとっても退職のメリットがあるが、年頃の娘がいると、夫婦で家を離れるのもなかなか難しいので、旅行の提案をするだけで空気読めていない感じになる。

さらに子どもの大学受験が迫れば、家の雰囲気はよりピリピリして、家に居座る「巨大な異物」に対してより多くの「流れ弾」が飛んでくるのは想像にかたくない。

だからといって一人旅に出たりすれば、「仕事していた頃もあまり家庭を顧みなかったけれど、仕事を辞めても変わらないのね」などとも言われかねない。

FIRE後は「家庭の平和」を維持するだけでも大変になるのだ。

「『事前の想定』が崩れる恐怖感」との戦い

FIREを決断した際、「もうこれで経済的自立は達成できたはず」と思っても、環境が激変すれば、実は「全然お金が足りていなかった」ということも起こり得る。

筆者が出社した最終日は2021年2月。その時点では、日米の10年国債の金利はそれぞれ0.2%1.7%程度だったが、現在では0.8%程度4.7%超えと、大幅に上昇している。

引退してからの2年半の間に、コロナ禍と米中の経済対立の先鋭化などによるサプライチェーンや労働環境、地政学上の変化など事前に予想できなかったことがたくさん起こり、物価水準が大きく変動した。

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