26年外資勤務「FIRE=幸せ」と限らない残酷な現実 意外と大きい「メンタルダメージ」その中身は?

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FIRE後の生活がどのようなものになるのか頭では理解していたつもりだったが、実際にFIREして初めて「社会的な生き物である人間にとって、人とのつながりを失うストレスは相当に強い」という現実が肌身に染みて理解できた。

家族との距離感の変化もストレスに

また、引退を機に、家族との距離感も大きく変化する。

長年早朝に家を出て夜遅くまで働く毎日を過ごしていたので、家にいる時間は限られていた。

だが、FIRE後は、基本的に毎日朝から晩まで自宅で過ごす。その突然の変化が家族にとって大きなストレスになる。

定年のケースとは違い、早期退職だと年頃の子どもが家にいるので話がよりややこしくなる。

「お父さんはずっとがむしゃらに働いてきたから、もう働かないことにする」

と高校生の娘に言ってみたところで、過去に父親が仕事で何を成し遂げたのかなどには興味がなく、比較的規則正しい生活を送っている彼女の目には、ただ毎日ゆっくり起きてきて夜は酒を飲んでいる、怠惰な生活を送っているダメオヤジにしか映らない。

学校で友だちに「お父さん何している人?」と聞かれても、「家でウロウロしている人」とはなかなか言いづらいはずだ。多感な時期の娘にとって大きなストレスに違いない。

妻にとっては、さらに大きなストレスとなる。

そもそも長年自分の時間とスペースが確保できていた自宅に、急に"新参者"が朝から晩まで居座るわけだ。

仕事でたとえたら、別業界から業界経験のない人がマネージャーとして突然転職してきて、いきなりプロパー生え抜きの管理職の自分に向かってタメ口をきいたり、自分のシマで朝から晩までウロウロしているような状況だ。

毎朝シャワーを浴びて髭を剃ってさっぱりとした格好で出社していたのが、一日中家の中を無精ヒゲ生やしてパンツ一丁でウロウロされたりすれば、それはウザがられるに決まっている。

そして、これまで家事を効率よく行うために自然にできていたルーティーンを乱しまくるのだ。

掃除するのにも存在が邪魔だったり、適当で済んでいた昼食を二人分作らなければいけなくなったり。

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