「ポスト例外主義」の米国、矛盾と向き合うZ世代 『Z世代のアメリカ』三牧聖子氏に聞く

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『Z世代のアメリカ』著者の三牧聖子氏
[著者プロフィル]三牧聖子(みまき・せいこ)/同志社大学大学院准教授。東京大学教養学部卒、同大大学院総合文化研究科で博士号取得(学術)。日本学術振興会特別研究員、早稲田大学助手、米ハーバード大学、米ジョンズホプキンズ大学研究員、高崎経済大学准教授などを経て2022年から現職。(撮影:梅谷秀司)
米国社会では2大政党である民主党、共和党それぞれの支持者の間で価値観の分断が進んでいるとされる。その中で、1997〜2012年ごろに生まれたZ世代の若者たちは、銃規制や人種差別問題などに関する社会運動の中心的役割を果たす。本書は未来の米国を担うZ世代を通して、矛盾を抱える超大国の多面性を示す。
Z世代のアメリカ (NHK出版新書 700)
『Z世代のアメリカ (NHK出版新書 700)』(三牧聖子 著/NHK出版新書/1023円/256ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──米国のZ世代の特徴とは?

米国のZ世代は多様で、本書も世代ですべてが決まると主張するものではない。ただ、年長世代と比べてリベラル志向が強く、政治社会のラジカルな変革を求めている。これは、さまざまなデータからも裏付けられる。本書では、Z世代のリベラル志向は米国の悲惨な現実と向き合うリアリズムからくるものだ、と主張した。

彼らは物心ついて以来、右肩下がりの米国しか経験していない。01年の9.11同時多発テロ以降の対テロ戦争は、円換算で約880兆円の戦費を浪費し、7000人を超える米兵のほか約90万人の敵兵や市民も犠牲となった。さらに、08年にはリーマンショックで国内経済が打撃を受け、格差も拡大。多くの若者たちが多額の教育ローンを抱える。20年から本格化した新型コロナ禍では、一国として最多の死者を出した。国民皆保険が整っていないなど、社会保障のもろさがあらわになった。

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