ドラッグストアVS調剤薬局、「勢力圏争い」が激化 ウエルシアの調剤併設が調剤大手アイン超え

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調剤大手クオール薬局の恵比寿店では一般用医薬品や食品、日用品まで幅広い商品を取りそろえる。不眠症や肥満に悩む人に適した高単価なサプリも、薬剤師が提案することで購入してもらえるという。

クオール薬局恵比寿店の店内。市販薬だけではなく、食品やシャンプーまで並ぶ

同じく調剤大手の日本調剤が550円均一の一般用医薬品「5COINS PHARMA」を販売するなど、薬局で購入可能な商品が増えてきた。

ドラッグストア業界と調剤薬局業界は勢力圏拡大へとM&A(合併・買収)を活発化させている。その結果、20店舗以上を運営する同一法人の数が増え、企業は集約化が進む。

調剤薬局のM&A仲介を手がけるCBコンサルティングの担当者は「医薬分業がうたわれ始めた頃には薬局数が急増したが、当時の経営者が60〜70代で引退し始めている。後継者不足の相談が多く、M&Aの案件は絶えない」と語る。

ウエルシアは調剤薬局やドラッグストアなどを買収する意向で、2022年度に1兆1442億円だった売上高を2030年に3兆円に拡大する目標を掲げる。調剤大手もM&Aを繰り返しており、両陣営の争いはとどまるところを知らない。

国が大手を狙い撃ち

そんな中、医療費増を抑えたい国は2022年度、同一グループで300店舗以上を展開する薬局の調剤報酬(技術料)を引き下げた。大手を狙い撃ちしたような改定だ。ウエルシアの池野隆光会長は4月の決算説明会で「次は100店舗、200店舗の企業がターゲットになるかもしれない。だが、そもそも1つの制度で店舗数を基準に差をつけること自体がおかしい」と疑問を呈した。

勢力圏争いを続けるドラッグストアと調剤薬局。それを牽制するような国との神経戦はもうしばらく続きそうだ。

伊藤 退助 東洋経済 記者

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いとう たいすけ / Taisuke Ito

日用品業界を担当し、ドラッグストアを真剣な面持ちで歩き回っている。大学時代にはドイツのケルン大学に留学、ドイツ関係のアルバイトも。趣味は水泳と音楽鑑賞。

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