オバマ夫人が告白、勝手に「レッテル」貼られる怖さ 大統領選でも経験、固定観念がある種の"真実"に

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たしかに根拠のある怒りや絶望も多い。でも問題はこうだ。その怒りをどうするの? それにくびきをかけて自制し、雑音(ノイズ)ではなくもっと長持ちする何かをつくれない?

いまは自己満足が手軽さの仮面をかぶっていることが多い。“いいね”をクリックしたり、シェアやリツイートのボタンを押したりして、たった3秒の努力をしただけで、活動している自分をほめたり、自分を活動家と見なしたりする人もいるかもしれない。ノイズをつくるのがうまくなり、お互いにそれをほめあっているけれど、仕事をするのをときどき忘れている。3秒間の努力で閲覧回数(インプレッション)は稼いでいるかもしれないけれど、変化は生んでいない。

何に反応や応答をしているのか。ときどき考えてみる値打ちがある。ソーシャルメディアに何かを投稿したり、大勢の人へ向けてコメントを出したりする前に、わたしはその問いを自分に投げかける。衝動的になっていて、自分がいい気分になろうとしているだけじゃないの? 感情を具体的で実行可能な何かと結びつけている? それとも感情に突き動かされているだけ? 変化を起こすのに必要な実際の仕事をする準備ができている?

文章を書くプロセスが有益な道具に

“気高く生きる”にあたって、わたしには文章を書くプロセスが驚くほど有益な道具になる。それは自分の感情を処理し、フィルターにかけて役立つかたちに変えられる手段だ。

心に、光を。 不確実な時代を生き抜く
『心に、光を。 不確実な時代を生き抜く』(KADOKAWA)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

バラクの選挙戦のあいだとホワイトハウスにいるあいだは、才能あるスピーチライターたちと仕事をする機会に恵まれた。いっしょに腰をおろして、頭の中身をことばにして吐きださせてくれる人たち。わたしが心の底からの感情を整理するのを聞きながらメモをとり、わたしが自分の考えを理解して考えを形づくるのを手助けしてくれる人たち。

信頼する聞き手に話をすると、いつも自分の考えを明るい日の光のもとで確認するきっかけになる。怒りと不安を分析し、大きな視点から論理的に考えられるようになる。

生産的なこととそうでないことを整理し、わたし自身にとってもっと高い次元にある真実にたどり着ける。わたしは学んだ。最初の考えに価値があることはめったにない。それは出発点にすぎなくて、そこから前へすすんでいく。

すべてをページのうえに広げてみて、それから磨きをかけ、見なおし、考えなおして、本当の目的をそなえたものへと向かう道を見つけていく。執筆のプロセスは、ひときわ強力な人生の道具になった。

ミシェル・オバマ 元アメリカ大統領夫人

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michelle obama

2009年から2017年までアメリカ合衆国ファーストレディを務める。プリンストン大学とハーバード大学ロースクールで学んだのち、シカゴの法律事務所シドリー・オースティンで弁護士としてキャリアを歩みはじめ、そこで将来の夫となるバラク・オバマと出会った。その後、シカゴ市長のオフィス、シカゴ大学、シカゴ大学病院で働く。若者が公共部門でのキャリアに備えられるよう手助けする団体〈パブリック・アライズ〉のシカゴ支部を立ち上げた。著書に、世界的ナンバーワン・ベストセラー『マイ・ストーリー』(邦訳2019年)。

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