住友金属鹿島製鉄所、津波被害から驚異の猛スピード復旧
津波は茨城県の鹿島臨海工業地帯も襲った。Y字型の鹿島港を挟んで神栖市側が石油化学コンビナート、鹿嶋市側が製鉄所。いずれも被災したが、製鉄所の復旧は驚くほど早かった。
大型高炉2基を擁し年間粗鋼生産能力830万トン、自動車用に多く使われる薄板を中心に作るのが鹿島製鉄所。住友金属工業の最大の生産拠点である。3月11日、震災はここにも大きなつめ跡を残した。Cガスホルダーというガスタンク2つが火を噴いて崩壊。製品出荷用の岸壁クレーンも倒れた。地震には耐えたクレーンだったが、津波で漂流した原料船がぶつかり、5台が倒壊してしまった。
また、コークス炉の原炭槽の下部が挫屈、コークスガス配管も落下し破損、岸壁は液状化により高低差が生じるなど大きな被害を受けた。地震発生時に荷揚げ作業をしていたアンローダーという設備も津波で原料船が流されたことで引きちぎられ、製鉄所にあった3機とも破損してしまった。原料を高炉に投入するベルトコンベアも折れ曲がって使えなくなった。
結果、前期に計上した特損は620億円。今期に150億円程度の特損を見込む。復旧の設備投資は200億円が必要で、はじいた金額が総額1000億円。これをあらゆるコストを絞り捻出するリカバリープランを作成したところだ。
新日鉄のバックアップも
震災直後から全工場が止まった鹿島製鉄所。震災翌日の早朝に、同社の直江津工場からの緊急支援物資が到着し、復旧基本方針が決定され、その復旧の足取りは驚くほど速かった。
稼働再開が早かったのが、震災復興に必要な素材の生産。3月18日に震災復興に必要なプレハブ住宅用の溶接軽量H形鋼の生産を再開している。「われわれの生命線であるガスが出なくなったので、電力だけで操業でき、復興で必要となる軽量H形鋼などを優先して再開した」(柳川欽也専務・鹿島製鉄所所長)。