防衛省の装備調達は、これから大きく変わる キーマンの防衛省装備政策課長に聞く<上>

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――防衛省の研究開発は装備開発や技術実証などが多く、基礎研究に対する予算配分が諸外国に比べて少ないが。

それに関してはまず、本年度装備品への適用面から着目される基礎研究へのファンドの予算を3億円と少額であるが確保した。これらは大学や民間企業の研究機関などが有する基礎技術である素材、素子、センサー、ロボットテクノロジーなど、たとえばガリウムナイトライド素子など将来防衛省が使用しそうな技術に対して後押しをしていく。

現状は説明責任を十分に果たしていない

関連情報は「東京防衛航空宇宙時評」にも掲載されています(上のロゴをクリックすると同サイトにジャンプします)

――技本も装備庁に吸収されることになるが、予算配分と、研究開発の機能は分離されるのか。

技本はそのままの形で装備庁に吸収される予定だ。

――それでは研究成果や完成した装備を客観的に評価できないのではないか。

それに関しては装備庁では、技術だけではなく調達性や、ユーザーの観点から多角的なパフォーマンスベースで評価する。

――現在、わが国では国会で個々の装備の調達数、調達期間、総額が議論されないまま、国会が開発や調達にGOサインを出すシステムだ。これでは不明瞭でありこの状態で明確、あるいは効率的なプロジェクト管理が可能なのか。またこの状態は国際共同開発に際して障害とならないか。

問題があることは確かだ。防衛省内では調達に関する具体的な見積もりを行っており、平成20(2008)年度からはライフ・サイクル・コスト年次報告書を出すようになっているが、諸外国に較べて説明責任が十分ではない。

P-1哨戒機は4発のジェットエンジンを持つ国産機だ(写真:海上自衛隊)

そこで、今後パフォーマンス、スケジュール、コストを明確化していきたいと考えている。一定以上開発費が高騰すればプロジェクトを中止するという仕組みも導入する。また全体的なポートフォリオの管理を強化するつもりである。さらに、調達全体をみるアナリストの養成が必要だ。その点では中期防、大綱だけの規定では充分ではない。

――本年度予算ではP-1哨戒機を20機一括で調達したが。

これまでは財政法の制限があり、5年以上の国庫債務負担が不可能だったが、今回法改正により本年度から平成32(2020)年度までに20機を約3396億円で一括調達し、417億円の削減になった。これは長期的な見通しを進めるにあたっての大きな一歩だと思っている。

※後編は日本の防衛産業は鎖国から開国へシフトする

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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