「らんまん」「VIVANT」今期ヒット作の隠れた共通点 今の日本人の潜在意識くすぐるテーマがあった

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脚本家の長田育恵がこの「人間の欲望」という言葉は、神木の提案によって書かれたものだと、22日、情報番組『あさイチ』に神木がゲスト出演した際、語っていた。神木のおかげで、おそれることなく、この強い言葉を書けると思ったと。

そして、この言葉がドラマのその後の万太郎を書く指針になったとも。神木当人は、その言葉を自身が発したと記憶していなかったようだが、誰発というのはさておき、「人間の欲望」という言葉が『らんまん』では重要なテーマの1つとなっていることが、この番組から見てとれた。

「出世」ばかりを目指す虚しさ    

『らんまん』を振り返れば、はっきり言語化される前から、人間が私利私欲によって他者と争う姿を批評的に描いている。。万太郎は正式な学生ではないながら、東京大学に出入りが許可され、そこで多くの人たちと交流するなかで、出世のために植物学研究が利用される経験をする。

新種の発見や、名付けを行うことがステータスになるため、皆が躍起になるさまを、第76回で、学生・藤丸(前原瑞樹)は「こんなに執念深い人たちが世界中にひしめいてて運が悪かったで済まされて、研究ってそれに立ち向かうことですか?」と嘆く。

大学の派閥争いや、我先に第一発見者になろうとする競争心についていけず、藤丸は大学を辞めることになる。やがて、彼がコツコツと好きな研究をしていくことが救いだ。

万太郎のように能力があっても大学を出ていない者は軽視される。大学では、学歴や上に立つ者の覚えがよいことでしか認められない。そのため、皆、躍起になって、留学して箔をつけたり、研究の手柄を競いあったり、上の人にこびへつらったり。

でもそうやって手に入れた地位は、組織が不意に変わることによってあっという間に風向きが変わり、これまでやってきたことが意味をなさなくなってしまう。このことの虚しさを『らんまん』ではずいぶん長い時間をかけて描いてきた。

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