「らんまん」「VIVANT」今期ヒット作の隠れた共通点 今の日本人の潜在意識くすぐるテーマがあった

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「人間の欲望」という言葉が登場したのは最終回。ベキは「争いは何ひとつ生まない」でも「人間の欲望にはきりがない」と語る。フローライトのもたらす莫大な利益は「すべての国民に正しく分配されなければならない」と主張する。

だが、「民族は宗教で分断しない世界」「相手を敬いあい、分かち合うことのすばらしさをこの国に根づかせる」というベキの理想は、国家権力によって踏みにじられる。「いまこの国は、助け合いの心はどこへやら、奪い合い、一部の特権階級が生き残ることばかり考えている」とベキは嘆く。

今を生きる日本人の潜在意識をくすぐった

『VIVANT』の大ヒットは、考察要素満載、個性的な登場人物の活躍、海外ロケまで行った痛快な冒険ドラマであることだが、当初はあまり視聴率が伸びなかった。終盤、ぐいぐい伸びてきた理由の1つは、この奇想天外な物語が、今の日本と地続きの、欲望にまみれた世界であることを明確にしたことで、今を生きる日本人の潜在意識をくすぐったからではないだろうか。思えば、同じ監督、同じ主演俳優でヒットした『半沢直樹』も、経済を主題にした人間の欲望による戦いだった。

ドラマを見て、果てない欲望に歯止めをかけるべきと思う人もあれば、その欲望のゲームの面白さを享受する人もいるだろう。『VIVANT』の場合は「欲望」をエンタメのエンジンとして駆動させ、『らんまん』は、明らかに欲望が主体の価値観からの逸脱を提唱しているように感じる。方向性は違うが、同時期に「人間の欲望」を打ち出してきたことが興味深い。一時期、連ドラは「真実」という惹句のように頻繁に用いられていたが、最近は「欲望」にシフトしているようである。

もう一作、人間の欲望にフォーカスしたドラマがある。大河ドラマ『どうする家康』(NHK)である。乱世を経て、戦のない国づくりを達成した徳川家康(松本潤)の物語で、彼の前には天下統一を目指す、戦国武将が次々立ちはだかる。

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