松下幸之助は壁にぶつかっても楽観的だった 「絶望はあかん、道はある」

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そして、再び、箸を使いながら

「だからやな、きみ、仕事をしとっても、もうこれでダメや、お終いやと思ったらあかんで。そう思ったら、知恵も工夫も生まれてこん。もうダメだと、壁の前に座り込んでいたり、2階には行けんとへたり込んだら、もう、それで、終いや。

だいたいな、人生でもそうやけど、もうダメや、あかんということはない。それは、もうダメやと思ってへたりこんで、諦めてしまうからや。道はいくらでもある。生きる方法はいくらでもある。きっと、あると思えば、勇気も希望も出てくるしな。そうすると心に余裕も出てきて、ええ知恵が生まれてくるもんや。人生でも、経営でも、絶望が、いちばんあかんな。道はある。まあ、行き詰まっても、行き詰まったと考えたらあかん、ということやな」

食べ終わって、箸を置き、湯呑みを両手で持ちながら、

「趣味は仕事」はいけないことか?

「そうそう、こないだ、経営者のUさんが、わしのところに、話に来たやろ。その人がえらい熱心に、日本人は働き過ぎる。今まではよかったけれど、これからもあんまり働いておると、世界中から批判されるようになるから、これからはできるだけ遊ぶように心掛けるべきだ。あんたもそうせんとあきませんよと、言っておったな。きみ、覚えておるか。それで、松下さんの趣味はなんですか、と聞く。わしはこれといってないわな。仕方ないから、趣味は仕事ですなあ、そう答えたやろ。そしたら、その人が、人間は楽しむために生まれてきたんやから、そしてそのために仕事をやっておるんだから、仕事ばかりはいけませんと、そんなことを話して帰っていったわね。

そういう考えもにも、一理あるけどな。だからと言って、遊ぶことが大事で、働くことは、二の次だということは、これは、どんなもんやろうかな。働かずして、なお遊べということをその人も言っておるわけではないんやろうけど、まず、働くことの大切さをやはり考えておかんといかんな。働くことが先でないと、きみ、遊ぶことも出来んやないか。

ところが、ただこれからは、遊ぶことが大事だというような、そういう話し方はようないな。遊ぶことも楽しむことも大事やと。けどそれ以上に、働くことの意義とか大切さとか言わんとな。指導者が、遊べ、遊べ、と言い出したら、日本経済はまもなく衰退して、日本は滅んでしまうわ」

“面白きこともなき世を面白く”、という高杉晋作の句に、野村望東尼が、“すみなすものは心なりけり”、と下の句をつけていることを知る人は少ない。

江口 克彦 一般財団法人東アジア情勢研究会理事長、台北駐日経済文化代表処顧問

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えぐち かつひこ / Katsuhiko Eguchi

1940年名古屋市生まれ。愛知県立瑞陵高校、慶應義塾大学法学部政治学科卒。政治学士、経済博士(中央大学)。参議院議員、PHP総合研究所社長、松下電器産業株式会社理事、内閣官房道州制ビジョン懇談会座長など歴任。著書多数。故・松下幸之助氏の直弟子とも側近とも言われている。23年間、ほとんど毎日、毎晩、松下氏と語り合い、直接、指導を受けた松下幸之助思想の伝承者であり、継承者。松下氏の言葉を伝えるだけでなく、その心を伝える講演、著作は定評がある。現在も講演に執筆に精力的に活動。

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