米SECが「虚偽申請」を見抜けない理由 エイボンへの謎の買収提案で再び注目

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エイボンに対する虚偽とみられる買収提案が表ざたになって以来、EDGARへの届け出許可を得ようとする企業や個人について、SECがどの程度の審査を行っているかに注目が集まっている。14日朝、インターネットを介してEDGARにエイボンへのTOBを届け出たのは、これまた正体不明の英投資会社だった。

SECは同日夕、「申請者は事実に即した届け出を行う責任があり、虚偽もしくは人を惑わせるような内容だった場合は取り締まり対象となる」とのに声明を出した。また、エイボンに対する買収提案について捜査を行うとした。

「公証人」のハンコがあればOK

だがSECは、EDGARへのアクセスコードを申請している投資会社や個人に対してどんなチェックを行っているか明らかにはしなかった。申請プロセスに詳しい人々からは、書式がそろっていて公証人の証明があることを確認する以外、大した審査はしていないとの話も聞かれる。

書類にスタンプを押し、署名が本物であることを証明するのは州からライセンスを受けた公証人。料金は10ドルかそれ以下だ。

公的な申請書類に署名した人物の身元確認が公証人頼みというのは、テレビドラマ『マッドメン』の舞台となった1960年代を思わせる。だが2004年にSECが新たな申請要件を取り入れた時は、規制当局もずいぶんと進んだものだと受け止められた。

それまでは、EDGARへのアクセス許可申請は紙の書類を(主に郵便で)SECに提出することで行われていた。だが2004年の規則変更で、申請書式の署名が公証人によって本人のものだと確認されていれば、インターネット経由で申請できるようになったのだ。

当時、この新方式はあまり人気がなかった。20数件あったパブリックコメントの大半は反対意見だった。

ウォール街の金融大手をいくつも顧客に抱える法律事務所「サリバン&クロムウェル」(ニューヨーク)も当時、公証人を要件とする手続きは「行政からの負担」を作り出すと指摘。「虚偽もしくは人を惑わすような申告に対し、すでに連邦証券法の下で存在する罰則に照らし」不要だとのコメントした。

SECは反対意見に留意したとしながらも、「自動化されていない現行プロセスにおける人の介入は信頼性の確保に役立っている」と結論づけ、この方式を採用した。

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