稼働率96%!大手も驚く「日の丸コンサル」の正体 高稼働の裏に独自モデル、外資勢に戦い挑む

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もっとも、ライズの北村社長はあくまで「完全にコピーというわけではない」と強調する。

ライズ・コンサルティング・グループの北村俊樹社長
ライズの北村社長は野村総合研究所出身。「外資ファームには負けたくない」と力を込める(撮影:梅谷秀司)

1つの例が2022年に導入した、部署の形態をとらない仮想組織制度「プラクティス」だ。DXや脱炭素など、業界をまたいだ大テーマごとにプラクティスと呼ばれる仮想チームを組み、コンサルタント1人ひとりの専門性向上を図っている。

ベイカレントのコンサルタントでも、グレードさえ上がれば専門領域は獲得できるが、ライズのプラクティス制度の下では、ある程度の実績が伴えば若手のうちからそれに挑戦できる。

「ワンプール制は経営モデルとして優れているが、顧客から見れば『ゼネラリスト集団』。得意な分野がわかりづらく、現場の社員も今後のキャリアを描きにくい。あくまでワンプールは維持しつつ、若手でも関心テーマの良し悪しを確かめられるようにした」(北村社長)

また、複数案件の掛け持ちが当たり前の業界において、シニアマネージャー以上を除き、1人のコンサルタントが受け持つ案件を1つに制限している。そうすることで、顧客にフルコミットのサービスを保証できる。

これは稼働率の押し上げ要因にもなっている。複数案件を掛け持つコンサルタントが多いと、いつ手が空くのかわかりづらく、会社も次のプロジェクトにアサインしにくい。結果として、案件と案件の間に待期期間が発生しやすくなる。1人1案件を基本とすれば、社内リソースの繁閑が明確になり、次のプロジェクトに間隔なく移行させることができるのだ。

人材採用が最大の課題

北村社長は「ベイカレントさんの良さを活用しながら、いろんなファームの出身メンバーの前職における課題意識と組み合わせ、独自モデルに昇華してきた。ブランディングなど足りない部分も多いが、(将来的に)外資ファームには絶対負けたくない」と意気込む。

まずは2024年2月期の増収増益が短期的な目標だ。コンサル市場はDXから脱炭素、人的資本開示、経済安保対策などテーマは豊富で、右肩上がりの成長が見込まれている。コンサルタント数を早期に500人程度まで拡大し、ベイカレントと同様、年30%ペースでの売上収益の成長を狙う。

課題となるのが採用である。ライズの稼働率は天井に迫る一方、単価については低単価を売りにしているため引き上げが容易ではない。残された成長のカギは人員拡大で、2024年2月期も34人の純増を計画する。ただ、大手から中堅まで多くのコンサル会社が採用を積極化している現状、人材の獲得競争は厳しい。

「箔付け」を意識した就労ニーズも強い業界において、優秀かつ多様な人材を確保できるか。上場は1つの足がかりに過ぎず、大手顧客の獲得や待遇改善などブランド力向上につながる材料の積み重ねが至上命令だ。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケ、コンサル、エンタメ産業などを担当。過去の担当特集は「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」「激動の出版」「パチンコ下克上」など。

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