植田総裁発言で揺れる金利と為替、真意はどこに 8月の転換、「年内マイナス金利解除」はあるか
そもそも先月(8月)の千葉県金融経済懇談会において内田眞一副総裁はマイナス金利解除に関して「現在の状況からみるとまだ大きな距離がある」と述べていた。この発言から4カ月後(年末:12月)のマイナス金利解除の可能性を見出すのは不可能である。
そう考えると、結局、「8月に気が変わった」というのが台所事情なのではないか。
では、8月に何が起きたのか。
円の対ドル相場は8月だけで約2%、年初来から8月末時点では約10%、円安に振れている。また、円安との併存が警戒される原油価格も8月だけで約2%、年初来から8月末時点では約4%上昇している。
ちなみに原油価格は9月に入ってから続伸しており、本稿執筆時点の年初来上昇率は約8%に達している。円安・原油高の併存は国民生活に直結するものであり、政治的にも問題視されやすい。日銀が原油価格に影響を与えることはできないが、円相場ならば相応に影響を行使できる。
無理筋な政策運営が限界に達した
いくら通貨政策をつかさどる政府・財務省が円安を牽制しても、金融政策をつかさどる日銀がハト派色を維持する以上、相場の流れは変わりにくい。理論的にも通貨政策と金融政策の方向は一致しなければ所期の効果は出ない。
現状の日銀は「金利上昇を抑止すべくオペを打てば円安が進み、金利上昇を容認すれば緩和姿勢が疑われる」という隘路にはまっている。
もはや「円安を警戒しながら緩和を続ける」という無理筋な政策運営が限界に達していると判断し、日銀は「緩和を続ける」という点について修正を図ろうという心境に至った可能性がある。普通の中銀ならば、そう考えて当然である。
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