植田総裁発言で揺れる金利と為替、真意はどこに 8月の転換、「年内マイナス金利解除」はあるか
しかし、わざわざ「年末」というフレーズを使った以上、相応の意図があった可能性は否めない。今までリスクシナリオですらなかったマイナス金利解除がリスクシナリオとして格上げされたという程度の認識は持ちたい。
なぜこの時期に植田総裁がそうした発言をしたのかと言えば、建前と本音、2つの理由があると考えている。
8月に「気が変わった」出来事
まず、建前としては「賃上げ機運の持続を想定しているから」に他ならない。
もとより植田体制下の日銀は声明文に「賃金上昇を伴う2%の物価目標の持続的・安定的な実現」を目指すことを明記している。今年の春闘における賃上げ率が30年ぶりの上昇率となった以上、来年以降もそれが続く可能性を念頭に置いて情報発信をするのは自然である。
事実、今春以降の日本では賃上げや財・サービス価格の値上げについて報道が相次いでいる。物価調整後の実質賃金が継続的に下落しているため、現状を「賃金と物価の好循環」と表現するのは難しいが、物価が継続的な上昇過程に入った可能性を多くの日本人が感じ始めているのも事実だろう。
しかし、賃金上昇の継続性はあくまで来春の春闘まで見極めなければ判断できないものだろう。
筆者もそう思っている。それゆえ今回、わざわざ踏み込んだ発言をした理由は、建前としては「賃金と物価の好循環」の芽が育っていることだとしても、本音は別のところにあるように感じる。
それはやはり「円安の抑止」だろう。
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