相次ぐ新施策、なるかロースクールの「反転攻勢」 一橋・慶応・早稲田・中央ロースクールに聞く

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2022年の司法試験合格率は44.8%と物足りない数字。とくに既修者の1回目受験の人の合格率を上げることが課題だ。在学中の司法試験受験に対応したカリキュラムへの変更や、先輩弁護士や修了生によるサポート制度などを行っている。

法学部の都心回帰でロースクールと連携強化

中央大学 大学院法務研究科 研究科長 小林明彦
中央ロースクール修了生の2022年の司法試験合格率は26.18%。入学定員を削減する前で、今よりロースクール入試が厳しくなかった修了生が、4回目・5回目受験(司法試験受験は5回まで)をしていたことが響いた。ただ、2022年の一発合格は43.7%、2021年は45.9%と全国1位の合格者を出した2012年の数字にほぼ並んでおり、回復基調と言える。

ロースクール志望者の減少ペースほどには上位ロースクールの定員は減っていない。これまでロースクール(2022年まで市ヶ谷、2023年から駿河台)と法学部が離れていたので、優秀な法学部生が近隣や合格率の高いロースクールに流れてしまうということもあった。

中央大学の小林ロースクール長
小林明彦/中央大学大学院 法務研究科 研究科長(記者撮影)

2023年に法学部が多摩から文京区茗荷谷へと都心に移転したので、学部のブランド力が上がることを願っている。3+2(法曹コース)が始まったので、中央大学法学部と連携し、ロースクールの教員が法曹コースの科目を担当する例が多くなっている。

ロースクールのほうでも、定員削減や入試合格ライン・進級要件の厳格化といった対策をとってきた。在学中の司法試験受験に対応し、3年生の4・5月は授業で実力を高め、試験直前期の6・7月は自習するなど、2カ月タームで柔軟な科目履修をできるようにした。中央大学法曹会のバックアップを受けたエクスターンシップ(実務体験)の履修者も増えている。中央の場合、全国各地にOBがいることが魅力だ。

ロースクールが苦戦する一方で、合格すれば司法試験の受験資格を得られる予備試験の受験者は増加傾向にあった。とくに学部の優秀層の中には、早い段階から司法試験予備校に通い、学部在学中に予備試験に挑むのが望ましいという共通認識があった。
予備試験の合格率は3%台と難関だが、合格者の司法試験合格率は97%台と高い。予備試験経由の司法試験合格は「優秀さの証し」であり、ロースクールを経由するより経済的・時間的負担も少ないことから、優秀な学生にとって法曹を目指す有力な選択肢となっていた。
しかし、法曹コースの開設により状況は変化しつつある。「サークル活動や大学の勉強を一生懸命にやり、ロースクールを経て法律家になるルートができた。これまでと違い、予備校の勉強ばかりしている学生とは異なる優秀層が入ってきている」(一橋の本庄法科大学院長)、「法曹コースの学生はロースクールの成績も優秀」(慶応の北居委員長)と新制度に一定の手応えを感じているようだ。
今年7月、在学中のロースクール生が司法試験に初めて挑んだ。短答式試験は1070人の在学生が受験し、933人が合格した。論文試験の結果は11月に出るが、ロースクールの存在意義が見直されるきっかけになりそうだ。
常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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