日経平均4万円への上昇相場がいよいよ始まった 「9月相場」は弱気どころか強気で仕込むときだ

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今から振り返ると、昨年9月の日経平均は、同年の大発会の2万9301円から9月30日の2万5937円まで約12%下げたことになる。ただ、すでに同年の6月20日に安値2万5771円があり、9月は底割れ感はなかった。それでも投資家にとっては嫌な9月相場だったが、NYダウの9月はこんな生易しいものではなく、極めて悲惨ものだった。

NYダウは同年1月4日に3万6799ドルの史上最高値をつけたあと、9月30日には2万8725ドルと、約22%の下げとなった。市場センチメント(心理)は「20%下がると、その上昇相場は終わり、売り先行相場が始まる」といわれるが、セオリーどおり、弱気一色となった。

このときの環境を思い出してもらいたい。9月相場に入る前の8月20~21日のジャクソンホール会議において、ジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長が超タカ派講演を行ったことで、市場が期待した2023年の利下げ予想は完全に否定され、楽観論は吹き飛んだ。

FRBはリセッション(景気後退)も辞さない覚悟で物価高騰を抑えにかかる姿勢を示したため、株式市場はお先真っ暗闇となったわけだ。「年末相場どころか、次の年(つまり今年)の相場をどう乗り切ったらいいのか」と、投資家の不安はピークに達していた。

2022年に比べアメリカの環境は大きく改善

アメリカの株価はこんな具合だったが、あらためて昨年9月前後の同国の環境と現在を比べてみよう。まず、実質GDP成長率は2022年1~3月期に-1.6%、4~6月期に-0.6%(いずれも前期比年率、以下同)と、2四半期連続のマイナス成長(テクニカルリセッション)となった。

その後、成長率はプラスに戻ったものの、結局、「国の基礎体力を計る指標」とされる潜在成長率の1.8%を一度も上回らなかった。

現在はどうか。2023年1~3月期の実質GDPは+1.1%のあと、4~6月期は+2.4%となり(その後+2.1%に修正)、1.8%から2.0%に上がった潜在成長率を上回った。

では、代表的な物価指標であるCPI(消費者物価指数)はどうか。2022年8月は前年同月比+8.3%、9月は同+8.2%だった。それに対して現在は、+3.2%(7月)と上昇率は大きく低下しており、「基本設定」がまったく違うことがおわかりいただけると思う。

2022年のようにCPIが8%を越えていては、パウエルFRB議長の講演も超タカ派にならざるをえなかった。筆者は以前から「ジャクソンホール会議が今年のターニングポイントとなる」としていたが、金融政策を決める際の重要指標であるCPIが8%台と3%台では、方針が大きく異なったのは当然のことだろう。

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