中国人観光客の「爆買い」期待する人の意外な盲点 あからさまなマナー違反をする人も今回は減る

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前出の知人によると、「列の順番を守らなかったり、道にゴミを捨てたりする中高年者に対し、若者が毅然とした態度で注意する姿を何度か見たことがある」という。中国社会は以前と比べると着実に成熟してきているのだ。

そのため、これから日本に来る中国人観光客の中で、あからさまなマナー違反をする人は以前よりは減るはずだ。少なくとも、かつて報道されたようなトンデモ迷惑行為を繰り返す人は、それほど目につかなくなるのではないだろうか。

ただ中国には、日本とは比べものにならないくらい多様な価値観を持った人が混在している。世代間の違いだけでなく、出身地で比較しても、都市部出身者と農村出身者では幼少期に受けたマナー教育のレベルが全然違う。そのため、訪日中国人のマナー違反者がほとんどいなくなることはありえない。日本人とは持っている「当たり前」が違うため、自分たちの当たり前を日本でも同じようにやってしまうケースはこれからもあるだろう。

たとえば以前、店頭に並んでいる食品をその場で食べてしまう中国人観光客の姿がメディアで面白おかしく取り上げられたことがあった。あれも当人にすれば、「店頭に並んでいる食品は試食用なので食べてもいい」という、自国の当たり前を当てはめて行動したにすぎない。

だがこうした点に関しては、最近は中国の旅行会社が「旅行中にやってはいけないこと」をツアー参加者にしっかり教えるようになってきている。慣習やルールの違いからくるこうしたマナー違反は、今後はどんどん減っていくはずだ。

「中国人はマナー違反ばかりする」というイメージ

そもそもの話を言えば、もとから個人客の中には「マナーやルールを守る、文化レベルの高い中国人」はたくさんいた。そうした観光客は周囲から中国人と気づかれていなかっただけだ。

だがメディアは、トンデモ迷惑行為を繰り返す中国人ばかりをことさらに報じてきた。道に大量のゴミを捨て、地べたに座って大声で騒いでいる姿のほうが画になるからだ。しかし、それはあくまで中国人観光客の一部にすぎない。「中国人はマナー違反ばかりする」というイメージは、メディアによって作り上げられた側面もある。

現にここ最近、中国人以外の訪日客がマナー違反をする様子が頻繁に報道されている。半袖シャツにスリッパ姿で富士山に登ろうとするフランス人や、台風が直撃しているにもかかわらず、強風の中で観光を続けようとするオーストラリア人など、呆れるような行動例が次々と報告されている。つまりは、マナー違反をする人間なんて必ずどの国にも一定数いるのだ。

中国人団体客の解禁で、「爆買い復活」や「迷惑中国人客の再訪」とはやし立てる声が多くなっている。だがそんな見立てとは異なる結果になる可能性がある。中国人の考え方や行動様式は、私たち日本人がイメージしている以上に、変化を遂げていると考えたほうがいいだろう。

千葉 祐大 人材コンサルタント/一般社団法人キャリアマネジメント研究所 代表理事

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ちば ゆうだい / Yudai Chiba

1970年生まれ。花王株式会社を経て、2006年に外国人材関連のコンサルタントとして独立。異文化対応に悩む経営者やビジネスパーソンに、外国人材のマネジメントを指導する研修コンサルティング業務を始める。現在はこの分野における第一人者の地歩を確立。全国にクライアントを抱え、企業研修、セミナー講師としても年間80回以上登壇している。著書に『小さな会社の外国人活用の教科書』(ぱる出版)、『異文化理解の問題地図』(技術評論社)、『なぜ銀座のデパートはアジア系スタッフだけで最高のおもてなしを実現できるのか!?』(IBCパブリッシング)。

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