北朝鮮の2022年経済成長率はマイナス0.2% 韓国の中央銀行発表の統計からみえる経済実態

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朝鮮社会科学院経済研究所の李基成教授(写真・曙光編集社)

注意すべきは、韓国側が発表する北朝鮮経済関連の統計は、さまざまな推測も加わり、正確な姿ではないということだ。おおよそのトレンドがわかる程度と差し引いてみたほうがよい。

では、北朝鮮は自国の経済を今、どのようにみているのか。

北朝鮮を代表するエコノミストである朝鮮社会科学研究院の李基成(リ・ギソン)教授に、2022年や2023年の北朝鮮経済について、書面による質問を行い話を聞いた。

2025年GDPは20年比1.4倍増をめざす

それによると、2021年の朝鮮労働党第8回党大会で「国家経済発展5カ年計画」が設定され、同計画の2年目となる2022年は、北朝鮮経済の各部門での生産を活性化させると同時に、その生産基盤を整備・補強に努めたという。そうすることで、国家経済を正常軌道に乗せて、人民にとって安定的、かつ向上した生活を提供することを目標として掲げた。結果、人民経済の重要部門では年間計画を完成し、自立的生産の土台を拡大・強化する成果を出したと説明する。

また2023年には2022年の成果を基にすべての経済部門での生産をより活性化させ、第8回党大会が決定した整備補強計画を基本的に終えることが中心的課題だと説明する。生産を増やして当面の国内需要を充足させると同時に、さらなる生産能力の拡大のための基盤固めを行うという内容だ。

とくに穀物生産の増大など「人民経済発展のための12の重要目標」の達成に注力し、2023年の目標を達成させるという。重要目標の中身は具体的に公開されていないが、穀物や電力、石炭、圧延鋼材、有色金属、窒素肥料、セメント、木材、繊維・布、水産、住宅、鉄道貨物・輸送、とされている。

また2024年には技術力の発展と効率化を目指し、生産能力がさらに向上するようにさせ、5カ年計画最終年の2025年には基幹工業など経済部門の生産目標達成に加え、GDPは2020年比で1.4倍増、人民消費品生産は1.3倍以上の成長を目指す、と説明する。

2020年のGDPは、韓国銀行によればGNIベースで約4.1兆円となる。また、2021年に北朝鮮が国連に提出した報告書の中で、2019年のGDPは約4.5兆円(当時のレートで335億0400万ドル)と明記したことがある。

韓国銀行の統計を基に計算すれば、2025年の国内総生産額の目標は約5.7兆円規模となる。また、北朝鮮が公表した額を1.4倍にすると、約6.3兆円となる。

2020年1月、コロナ禍を理由に国境を閉鎖して以来、貿易など対外経済面での活動がふるわなかった北朝鮮。ここに来て、国境を接する北朝鮮・新義州と中国・丹東でビジネス再開に向けた動きが出始めている。

韓国の大韓貿易投資公社(KOTRA)は最近、「2022年の北朝鮮貿易における中国への依存度は96.7%で、史上最高になった」と発表した。これが事実であれば、貿易総額からみて、中国との関係がほとんどということになる。となれば、対中貿易が少しでも増えることで、北朝鮮経済へのインパクトもそれなりに強まるということになりそうだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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