東海道新幹線も廃止「車内販売」海外最新事情は? 休日など「街で何も買えない」時間帯の味方

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食事の内容が充実していることも、こうした需要に拍車をかけている。フランスのinOui(TGV)やドイツのICE(インターシティ・エクスプレス)をはじめとする高速列車では、飲み物や作り置きの食べ物だけでなく、車内備え付けのオーブンや電子レンジを使ってホットサンドイッチやパスタなどを調理して提供している。

iryo 車内食
スペインの高速列車「iryo」の1等車で出された機内食ならぬ「車内食」。スペインの発泡酒Cavaも供される(筆者撮影)
iryo 車内売店
「iryo」は普通車の乗客もワインバーをイメージしたカウンターでタパスや飲料が買える(筆者撮影)

ただ、このような高速列車は調理用の設備やスペースに一定の制約がある。筆者の最近の経験では、客車列車の食堂車のほうがしっかりとしたキッチンを備えており、地上のレストラン、あるいはレベルの高いホテル並みの食事を提供する列車もあって目を見張る。

目下、列車グルメとしてレベルが高いのは、オーストリア国鉄などがウィーンをハブに運行するレールジェット(Railjet)だ。前菜からメインディッシュ、デザートまで一通りのコースを提供し、コーヒーマシンはもとより、生ビールをタップから注ぐ装置もある。食事やお酒を楽しみながら2時間程度も長居する乗客も少なくない。

「QRコードでデリバリー」もあるが…

JR東海は車内ワゴン販売の終了後、グリーン車では各席に設置したQRコードを使用し、手持ちのモバイル端末で飲み物などをオーダーできるサービスを行うという。同様のサービスは欧州にもあり、イギリスの東海岸を南北に走るLNER(ロンドン・ノースイースタン鉄道)が運行する日立製車両の高速列車「あずま(Azuma)」が全旅客を対象に実施している。車内にはWi-Fiを完備しており、モバイル端末による注文のためのインフラも整っている。

イギリスの高速列車「あずま」では座席のQRコードで飲み物などをオーダーできる(筆者撮影)

ただ、多くの乗客は注文した品を席で待つのはまどろっこしいとばかり、「車内の売店をこれから開ける」とのアナウンスが流れるやいなや、コーヒーなどを買いに急ぐ姿が見られる。また、スタッフが1人しかいない時間帯は「注文されても届けられません」とのお詫びが入るが、売店まで買いに行く必要があっても、温かい飲み物が車内で買えることのほうがよほど嬉しいわけだ。

イギリスに限らず、欧州の優等列車では車内ワゴン販売と、食堂車や売店などでの販売を併用しているケースが多い。ランチやディナー時間には、売り場のカウンターに列ができるほど混み合うので、席で待っていたのではなかなか欲しいものにありつけない。JR東海は今回のワゴン販売終了の理由の1つに「将来にわたる労働力不足への対応」を挙げているが、欧州もコロナ後のサービス業における人手不足は深刻で、ワゴン販売にまで人員を割けないという事情はあるようだ。

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