アブダビ巨大油田巡る“資源外交”の舞台裏 権益を得た背景には3年越しの交渉があった
実際、中国の王毅外相は2月14日、UAEのアブドラ外相と会談。3月5日には、韓国の朴槿恵(パククネ)大統領がムハンマド皇太子と首脳会談を行うなど、動きが活発化した。
一方、日本側は2月12日、安倍晋三首相がムハンマド皇太子と、非公式の電話会談を行う。その数日後、経済産業省の高木陽介副大臣を首相特使として、アブダビに派遣。1月中旬に同じく訪問していた宮沢洋一経産相に続き、教育や医療分野における協力や日本企業の投資などを強調した。アブダビのハルドゥーン執行関係庁長官が来日し、安倍首相への表敬訪問をした4月12日には、日本の内示がほぼ固まっていたようだ。
INPEXは40年以上、アブダビで海上油田を手掛けており、「向こうからの信頼は厚い」(経産省)。2013年の安倍首相訪問から、両国間の要人往来は16回にも上る。日本をトタルの次に選んだアブダビ側の胸中は不明だが、中韓にない開発実績と積極的な資源外交が物を言った。
中東の地政学リスクも回避
原油輸入量が日量345万バレル(2014年)の日本にとって、今回得た同8万~9万バレルは、全体の2%強に過ぎない。ただ、政府は2030年までに原油・天然ガスの自主開発比率を40%(現約18%)とする目標を掲げており、その意義は決して小さくない。
しかもADCO鉱区の原油はインド洋沿岸のフジャイラ港から全体の9割の輸送が可能だ。「ホルムズ海峡封鎖」という中東の地政学リスクを回避できる。長年の課題だった石油の安定調達へ、まずは一歩を踏み出したといえるのかもしれない。
(「週刊東洋経済」2015年5月16日号<11日発売>「核心リポート03」を転載)
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