大企業も望まぬ「下請けイジメ」生む日本の商習慣 旧世代の悪しき値下げ脳に現世代が苦しむ訳

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問題となるのは値上げ交渉のときだ。もともと中身の詳細を取引先は出してくれていない。しかし値上げ交渉の際には「この製品の中身に〇〇という材料を使用していて、それが値上がっているから、最終価格に反映してくれ」といわれる。先に登場してくれた大手繊維関連メーカーの調達マネージャーがいう。

「最初から中身を明確にしてくれていたら交渉に応じますよ。でも、もともとブラックボックスにしておいて、値上げ交渉の際にのみ、そんなこといわれたって……というのが本音です。

取引先にとってみれば、そもそもリスクをどう取るかの話ですよね。ブラックボックスにする代わりに、市況高騰は自ら責任を取る。あるいは、公開する代わりに、買い手側に市況の面倒を見てもらう。とはいえ、優越的地位の濫用といわれてしまうから、交渉に応じるしかないんですけれど……」

多くの人たちは、原材料等が上昇しているから仕入れ価格を上げろ、という。しかし、買い手側の企業は株主への説明責任もあるし、むやみやたらに価格を上げられない。かといって、値上げをしないと優越的地位の濫用といわれる。

だから、妥当な金額を査定したいと願い、なぜその値上げ幅になったのかの委細を尋ねる。値上げを認めたくないわけではなく、双方にとって適切な値上げ幅にするための交渉のためにだ。それなのに、妥当な価格を査定するほどの情報をもらえない……。

ここで、あえて中小企業側に立つならば、「交渉」が「圧力」に思えてしまうほど、彼らはこれまで価格を下げることばかり求められてきたのかもしれない。ここに、今のサプライチェーン・調達関連従事者の「仕入れ価格を上げろって、簡単にいうけれど」という苦悩がある。

業績が絶好調で、かつ理屈のない仕入先の価格を上げるべきか

恨み節を聞かせてくれたのは、大手インフラ企業の調達マネージャーだ。

「取引先が『納入価格を〇〇円ほど上げさせてください。労務費が上昇してどうしようもない』と申請してきました。たしかに労務費が上がっているのは知っています。

でも、現場の社員から聞くと、その取引先は人員を効率化してさほど影響はない、という。そこで、その取引先の最新の決算書を取り寄せると最高益なんですよ。労務費比率も上がっていない。

そりゃ、もちろん、いいたいことはわかりますよ。でも、こちらが『さほど影響はないのではないか。具体的に影響額を教えてほしい』といっているのに『値上げできなければ納入停止します』と返事されるのは、どうかと思ってしまう」

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