大企業も望まぬ「下請けイジメ」生む日本の商習慣 旧世代の悪しき値下げ脳に現世代が苦しむ訳

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

私はサプライチェーンの現場に身を賭している。大企業がやっと重い腰をあげて、中小企業の値上げを認めるにいたった……と書くのはたやすいし、そう書きたい衝動に駆られる。しかし、現実はそう簡単ではない。むしろ、大企業の肩を持ちたくなる状況に多く出くわす。

「仕入れ価格を値上げしろ」と簡単にいうけれど…

大手繊維関連メーカーの調達マネージャーが語る。

「たぶん他社も同じだと思いますが、値下げのマニュアルはありますが、値上げのマニュアルはありません。いくらの値上げが妥当かどうかはその都度判断するしかありませんし、上司も同じです。でも値上げ幅は妥当かどうか、かなり真面目にやっています。

たとえば取引先が『ナフサが値上がりしている』といってきたら市況データを確認します(著者注・ナフサ=石油製品)。そして、調達品がナフサと連動するとすれば、何円くらいの値上がりが妥当かを計算します。でも、取引先からはその想定の値上げ幅以上の申請が届くんですよ。だから『なんで?』と質問しても、まったく回答がありません。『社内で、これくらいは認めてもらってこい、といわれています』といわれるだけ……。

と思いきや『値上げは、そちらの査定どおりでけっこうです。ただ1年分をまとめて注文してくれませんか』といわれたケースもあります。こちらは妥当性を検証して納得できればいいですよ、といっているのですが……」

読者は「一行見積書」という言葉をご存じだろうか。おそらく読者の勤める企業の調達・サプライチェーン関連部員は知っているだろう。これは文字どおり、一行で製品価格は〇〇円と書いている見積書のことだ。

もちろん買い手は見積書の詳細がわからない。建設業界、自動車業界の一部など、この一行見積書を基本的には許さない業界はある。ただ、見積書の詳細を提示するのは法的に義務付けられているわけではないし、現実的には取引先が出してくれない。そこで買い手の多くは一行見積書でもあきらめる。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事