中国の銀行が苦境、利下げが利益を圧迫 預金金利自由化も圧迫要因に
[上海 11日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)の利下げや預金金利の自由化による利ザヤ縮小で、中国の銀行は、金融危機に見舞われた2009年以来となる厳しい状況に直面している。
人民銀行は10日、企業の借り入れコストを引き下げるため、貸し出しおよび預金の基準金利を25ベーシスポイント(bp)引き下げると発表した。利下げは昨年11月、今年2月に続き、過去6カ月で3回目。人民銀行はまた、銀行が裁量で決められる預金金利の上限を引き上げることも発表した。
今回の決定によって、銀行は預金獲得のために預金金利引き上げが求められる一方で融資金利が引き下げられ、結果的に銀行の利益は圧迫される見通し。
一部のアナリストは、3回の利下げと預金金利の上限引き上げにより、銀行の今年の通年利益は最大22%減少する可能性があるとみる。
中国工商銀行<601398.SS><1398.HK>など国内5大銀行の2015年第1・四半期利益の伸びは前年比2%以下にとどまり、数年前の2ケタ増益からの落ち込みは顕著だ。
加えて、国内銀行は増大する不良債権への対応も迫られている。中国指導部は銀行が過度の手数料を徴収していると批判するが、手数料は銀行にとっては失うことのできない収入源だ。
中国の商業銀行の不良債権比率は3月末時点で1.39%に上昇。不良債権は前年同月から52%も増えている。
銀行の借入金利と貸出金利の差である純金利マージン(NIM)は、人民銀行が現在の利下げサイクルを開始した昨年11月以降縮小している。
モルガン・スタンレーの調査リポートは、3回の利下げと預金金利の上限引き上げを受けて、中国の銀行の2015年純利益は6─22%減少する可能性があると指摘。年内に追加利下げが少なくとも1回あると予想している。
人民銀行の周小川総裁は3月の全国人民代表大会(全人代)で、2015年末までに銀行に自由な預金金利の設定を認め、金利を完全に自由化する可能性がある、と発言した。
アナリストによると、預金金利の自由化を受けて、国内の中小銀行は預金を集めるために大手行よりも高い預金金利を設定するとみられ、大手行より利ザヤが縮小する可能性が高い。
ゴールドマン・サックスは調査リポートで「平安銀行や華夏銀行などの中小銀行は他行よりも(預金金利自由化の)打撃を受ける可能性が高い」と指摘した。
一方で、利下げのプラス効果も想定される。ムーディーズ・インベスターズ・サービスのシニアバイスプレジデント、トーマス・バーン氏は、「利下げが成長見通しを支援する範囲において、一段の経済成長と借り入れコストの低下はともに借り手の返済を助けるため、利下げはクレジット・ポジティブ」との見解を示している。
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