福島県民は、東電と国に裏切られ続けてきた--佐藤栄佐久・前福島県知事

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 東電の荒木浩社長(当時)からは、さまざまな地域振興策の申し入れを受けたが、実現したのは、「Jヴィレッジ」だけ。会津の美術館建設や、郡山のサッカースタジアム建設などはいつの間にか消えてしまった。

JCOの臨界事故などで原発不信が高まり、01年に東電は一度、すべての新規電源の開発を凍結すると発表した。県も同意したが東電は翌日には「原子力は別」と撤回。

それどころか、数カ月後には、資源エネルギー庁の長官が「原発を力ずくでも進めていく」と発言したり、福島県が示した核燃料税の引き上げに対しては、東電常務が「いかなる手段を使っても潰す」と恫喝したりするなど、一触即発の状態となった。

国と一体となって一度決めたことは、ブルドーザーのように一気に推し進める、東電という企業の体質を目の当たりにした。

福島県民は東電や国を信じては裏切られの繰り返しだった。その揚げ句に、残念ながらチェルノブイリと並び歴史に名前の残るような事故が、この福島で起きてしまった。県民を裏切り続けて最悪な事態へと至った。この事故は天災ではなく、東電と国が起こした人災にほかならない。

さとう・えいさく●1939年生まれ。88~2006年福島県知事。収賄罪で1、2審で有罪判決を受けたが、えん罪を訴え最高裁に上告中。

(週刊東洋経済2011年4月23日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

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