楽天証券は、なぜ「マック対応」を強化したのか 「証券売買はWindows」の常識を初めて打破

拡大
縮小

――日経平均株価が約15年ぶりに一時2万円を回復するなど、日本のマーケットは堅調で、トレーディング部門は当面好調が続きそうだ。さらにNISA(少額投資非課税制度)の追い風が吹いている。

われわれの証券会社は、「トレーディング」と「資産形成」(アセットビルディング、投資信託や債券売買手数料、富裕層との取引)の「2本柱」からなる。特に後者では、常に約9900万IDを有する楽天グループとの連携強化を意識している。実際、毎月の新規口座の約4割は、グループからの顧客であり、毎月1000円からはじめられる「投信積立」はグループのシナジー効果を発揮できる人気商品になっている。

この資産形成ビジネスでは、それだけにとどまらず、手数料依存が強すぎるとの認識の下に、リーマンショック直後の2008年10月にIFA事業を発足させた。現在は、この事業が育ってきている。

市場悪化時でも「顧客が継続する仕組み」を構築

IFAとは、Independent Financial advisorの略で、証券会社に属さず独立・中立的な立場からお客様に資産運用のアドバイスを行う金融のプロ。元証券マンや銀行マンなどが主体だ。彼らと業務委託契約を結び、富裕層の獲得を目指してきたが、これが着実に実りつつあり、預かり資産は現在1500億円を越えた。

2015年3月期の全体に占める収益構造の内訳は、トレーディング部門が約51.9%(2014年3月期は約58.1%)に対し、もう一つの柱である資産形成部門が42.3%(同約37.2%)となり、かなりバランスがとれてきた。

地道な努力が実りつつあるところに、いまNISAの追い風が吹いている。3月末現在NISA開設口座は約26万で、稼働率は66%を越えており、これはネット証券においても高い。新規開設の顧客には「2000円分の投信」のプレゼントもさることながら、初心者にわかりやすく「5つのファンド」を提示して、そこから商品を自由に選べるようにしているのも、結果が出ている理由の一つだと思う。

次の段階への課題は、こうして積み立ててくださったお客様への、「積み立て継続のフォローアップ」だ。どんなによい商品を提供していてでも、市場環境が悪くなると、解約が相次いでしまいがちなので、お客様に継続していただけるよう、どう情報を提供していくか。これが中期的な課題だと考えている。

福井 純 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ふくい じゅん / Jun Fukui

「会社四季報オンライン」編集部長。『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報プロ500』『株式ウイークリー』『オール投資』編集長、「東洋経済オンライン」編集部長、証券部長を経て現職。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)、日本テクニカルアナリスト協会理事

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT