■親善大使が熱烈なファンを生み出すコマーシャル・イノベーション
ネスカフェアンバサダーは2012年から開始したサービスだ。ネスカフェバリスタやドルチェグストといったコーヒーマシンをオフィスなどに初期費用無料・サポート費用無料で貸し出す。
そしてコーヒーを定期購入してもらうことで収益を得る仕組みになっている。コーヒーは1杯あたり、バリスタなら20円から、ドルチェグストなら54円から。
職場でネスカフェを販売
アンバサダーとは「親善大使」のことだが、この場合は「熱烈なファンとしてネスカフェを広める人」という意味だ。熱烈なファンがオフィスでWEBから申し込みをして、職場でネスカフェを販売してくれることになる。
この仕組みの妙は次の6点にある。
② 定期購入で安定的に売上が見込めて、「顧客の固定化」と「ファン化」が望める
③ ファンからの売り込みなので、「好意的な情報発信」が望める
④ メーカーからの売り込みではなく、職場の第三者的な意見なので信頼を得やすい
⑤ アンバサダーから、使用シーンに関する真摯なフィードバックが得られる
⑥ 双方向の意見交換や、実験ができる
この時のコマーシャル・イノベーションのインサイトは、「私が女性だからって、どうしてみんなのためにお茶を淹れたり珈琲をサーブしたりしなきゃならないの! 自分でやってよ、部長!」「あ。これ導入したら、そんな面倒(ペイン=マイナスの不満)から解放されるな」などと推察できる。
そして顧客は、実際にやってみたら、「なんだかコーヒーを囲んで皆が会話してるし、喜ばれるって、いいな(ゲイン=プラス、嬉しい効果)」となった。
ネスレは、マーケティング・イノベーションを複合的に進化させて価格支配力を獲得している。プロダクト、コマーシャルに加えてビジネスモデルの3つのイノベーションで相乗効果を高めていたのである。
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